3/2016
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図表3 大型ダウンウィンド型風力発電システムメンテナンス頻度の削減・最適化が可能となる。CBMを行うためには,いつ機械が故障しそうか,その予兆を正確につかむ必要がある。これを可能にするのが,ビックデータ解析技術である。日立では,膨大なデータを解析することにより,故障の予兆を検知する。この予兆診断技術の開発には,対象機器の長期間に及ぶ各種稼動データが必要だが,今までは,メンテナンスに必要なデータの収集にも制約があったが,HTWが風力発電事業者となることで,風車の稼動データ全てを取得することが可能となり,予兆診断技術開発の可能性が見えてきている。さらに,保守の自動化を目的とするロボットの開発は,2014年度中に市場ニーズと日立グループ内の既存技術の調査を終えて,2015年度より検討されている。まだ構想段階であるが,日立の既存技術を用いて開発費を抑えつつ,作業員の代わりに風車のメンテナンスを行うロボットの開発を想定している。ロボットによる保守自動化により,メンテナンス費用の削減と安全性の向上が期待される。また,HCCはファイナンス・サービスとして風力発電事業者への事業融資を行ってきた。事業融資は,設定した金利に基づき安定した収入を得られるローリスク・ローリターンなファイナンス・サービスであるが,投資(出資)に比べると利回りは低い。一方,投資(出資)は,レバレッジがかかる分,事業融資よりも利回りが良いが,事業停止による未回収金の発生などの事業リスクを負担するハイリスク・ハイリターンなファイナンス・ビジネスである。そのため,発電事業者への投資(出資)を行うには,風力発電事業者の事業リスクを把握する必要がある。HCCは,HTWの風力発電事業を通じて,立地選定や事業運営のノウハウを蓄積することで,有望案件を見極める能力を強化しつつある。HTWから得た有望案件選定ノウハウを武器に,HCCは積極的に風力発電事業者への出資件数を拡大させていく構想を描いている。HTWは,日立が開発した新型風車3機種を導入している。この施策では,製品開発に顧客視点のニーズを取り込むために,3機種3基の実機データを収集し,風車を運営する上で洗い出される製品課題を開(出所)日立ホームページ《http://www.hitachi.co.jp/products/power/wind-turbine/feature/rotor/》より引用[2]-21-発にフィードバックし,製品の顧客訴求力向上を図る計画である。これらの風車3機種は,日立が独自に開発を進める大型ダウンウィンド型風力発電システムである。ダウンウィンド型とは,ロータ(回転体)をナセル(発電機などの収納筒)の風下側に配置する風車構造のことを言う。ダウンウィンド型風車は角度の付いた回転面の下側から風を受けるため,起伏のある場所や海面と平行に強風の吹く洋上で高い発電効率を発揮する。風況の良い立地が少ない日本では,このような高効率風車へのニーズが高まると見込んでいる。HTWには,これら3製品を顧客(ユーザー)として使用しながら市場や顧客ニーズの変化を捉え,周波数や電圧制御への対応など,風車の実用性を高めていく役割が求められている。

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