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株式会社日立製作所 藤井  享わが国の再生可能エネルギー(太陽光発電,水力発電,風力発電,地熱発電,バイオマス発電)の発電事業は,近年のグリーンイノベーション政策の高まりと,2011年3月の東日本大震災以降の電力供給方式の分散化の要請を受けて,ここ数年で伸張している。その一番大きな理由は,経済産業省が再生可能エネルギーの普及に向けた施策として,FIT(FeedinTariff)「固定価格買い取り制度」を施行したことである。わが国におけるFIT制度では,太陽光発電の買い取り価格が,世界で最も高い水準に設定されたため,同分野に新規参入事業者が集中しており,FIT認定容量全体の約9割以上を太陽光発電が占めるという結果になった。その一方で,買い取り価格が低い上に,風車の設備運営ノウハウを必要とする風力発電事業への新規参入は少なく,FIT認定容量は全体の2%に留まっている。この様な現状を鑑みて,経済産業省では,建設費用の低減傾向に基づき,太陽光発電の買い取り価格を毎年継続的に引き下げ,2014年には,非住宅用(10kW以上)を約10%,住宅用(10kW未満)を約2%引き下げる他,風力発電については,新たに洋上風力の区分を新設し,非住宅用太陽光発電よりも高い価格(1kWhあたり36円)に設定した。そのため風力発電事業の普及・拡大が,今後さらに加速するものと見込まれている。一方,わが国における製造業の,サービス事業の-18-受注比率は増加傾向にあり,利益の多くをサービス事業が創出している他,わが国の製造業を取り巻く外部環境は,IoTやインダストリアル4.0を要素技術に「顧客協創型ビジネス」への転換点を迎えている。「顧客協創型ビジネス」とは,顧客と共に新ビジネス創生による売上拡大や,コスト削減による競争力強化などを実現するもので,顧客の顧客を開拓する新規ビジネスをいう。本論では,以上のことを鑑みて,わが国の総合電機メーカー(発電機器メーカー)が取り組む再生可能エネルギー(太陽光・風力発電)事業のビジネスモデルを紹介して,同分野での導入促進に向けた政策的提言を行う。2.1. 太陽光(メガソーラー)発電のサービス事業わが国の太陽光(メガソーラー)発電事業は,2003年度に導入されたRPS制度や助成金・補助金が後押しとなり急速に普及・促進されている。メガソーラーとは,1MW以上の出力を持つ太陽光発電システムのことであり,主に自治体,及び民間企業が主導となり,遊休地・堤防・埋立地・建物屋根などに設置される大型の太陽光発電設備である。近年,エネルギーを取り巻く情勢の変化により,再生可能エネルギーへの関心が高まっているが,2011年3月の東日本大震災に伴う原発事故による電力不足,さらには,2012年7月に開始された再生可能エネルギーのFITの導入により,採算性が確保されたことにより,国内でのメガソーラー建設1.はじめに2.本論(事例研究)再生可能エネルギー(太陽光・風力)発電事業のサービス・ビジネスモデル

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