3/2016
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1.はじめに図1 開発したエゾシカ囲いワナ(2014年度)北海道職業能力開発大学校 安井 雄祐-14-囲いワナを示す。地域ニーズ型開発課題テーマの2つめとして2015年度に「オルゴールシリンダ自動加工機の開発」(以下,「オルゴール加工機」)に取り組んだ。大学校がある小樽市は北海道有数の観光地であり,観光土産としてガラス製品と並んでオルゴールに人気がある。店頭に並んでいるオルゴールシリンダのほとんどは金型を用いたプレス式で製造されており,大量生産により安価で売られている。大量生産が前提になっているため,オルゴール曲としては広く一般に知られているメジャー曲に限られている。一方,自作曲や校歌などのマイナーな曲をオルゴールにしたいというニーズは潜在的に多くある。マイナー曲をオルゴールにするには金型プレス式では採算に合わず,シリンダ円筒面にあけた穴にピン(針)を打ち込む針打ち式が経済的である。針打ち式は手動の場合は高い職人技術が必要となり熟練が必要となる。また針打ち自動機は世界の巨大オルゴールメーカが専有しており一般的ではない。そのため小樽にあるオルゴール店では数年前より自社製針打ち自動機の開発を進めており,2015年度からは当校も加わり共(1)背景職業能力開発大学校の応用課程では「ものづくり現場を担う将来のリーダ」を養成するために,ものづくり現場を集合教育に導入することを掲げている。それを実現するシステムとして実学融合方式,課題学習方式,ワーキンググループ方式を採用し,企業における生産現場を模して,実践力を向上させる内容になっている。卒業年次にはその総まとめとして開発課題実習を実施している。開発課題のテーマ設定について,「応用課程の考え方」[1]によると「地域の産業界が抱える技術的課題等を題材にした開発課題実習により,企画・開発段階から製品評価等までに必要となる能力を習得させる。」とあり,地域産業界のニーズを開発課題のテーマに反映させることで学生の教育効果を高め,地元企業への就業を促進し地域に貢献するねらいがあると考える。(2)取り組んだ地域ニーズ型テーマの概要今回,地域ニーズを題材にした開発課題実習を2テーマ指導した。ひとつめは2014年度に「エゾシカ囲いワナの開発」(以下,「エゾシカ囲いワナ」)をテーマに取り組んだ。北海道では増えすぎたエゾシカによる食害が深刻化している。近年ではエゾシカの一部が養鹿後,食肉として有効活用されており,高い生体捕獲技術が求められていた。そこで地域企業と協力し開発課題グループによる共同で新型のエゾシカ囲いワナを開発した。実際にワナを運用し1シーズンで30頭以上の捕獲実績を得た。図1にエゾシカ地域ニーズを題材とした開発課題の指導法— エゾシカ囲いワナとオルゴールシリンダ自動加工機の開発を通じて —

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