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職業大フォーラム2015にて(2015年10月30日)れども全体は真っ直ぐ、これが社会に対応していくための基本かとも考え始めていた。本校を取り巻く社会批判が厳しくなってきたが、しかし本校の職業教育訓練(VET)を真摯に行うとの基本姿勢は変えずに、批判は受け入れて行かなければならないと信じるようになったのは、この「ねじれ花」のお陰であったように思う。私自身が本校にお世話になったのは2008年10月で、自民党首班政権時代であった。当時から本校のあり方に関して熱心な議論が交わされ、9月には内閣府特命担当大臣(規制改革)から2回招聘され本校の将来像について議論した。結果的には12月の麻生内閣閣議決定において、「職業訓練指導員養成のあり方とコストパフォーマンスを抜本的見直した上で、ものづくりに関するセンターオブエクセレンスとして、企業競争力の強化に資する取り組みを行う」と纏められた。しかし2009年9月に民主党首班政権が発足し、10月頃から関係議員が訪校され、本校の将来像に関して意見交換が開始された。厚生労働大臣政務官を筆頭に、厚生労働大臣ほかが2回視察され、広く「事業仕分け」で意見が出された。翌2010年に本校の基本業務であった指導員養成課程としての学士課程(長期課程)の廃止、および相模原校を閉鎖し旧小平校(当時の東京校)に移転統合することが決定された。すなわち、本校の設置に関わる職業能力開発促進法第27条は全く変更せず、読み方を変えたとも言えよう。具体的には、従来は本校長期課程の卒業生が得た指導員の資格は廃止し、今後は、一般大学卒業生と本校を含む能開大卒業生を対象に2年間(技能力がある者は1年間に短縮可能)、併せて社会経験がある者は1ヶ月〜3ヶ月間の教育訓練を行って、職業訓練指導員に育成するものである。また現行指導員の技能レベルの維持向上は本校の責任で5000名/年実施すること、これらに必要な調査研究を毎年13課題程度行うことなどである。この主要3事業を支えるものとして、遅ればせながら労働政策審議会におい-2-て、従来の学士課程の後継として、他の能開大の2年制の専門課程とプラス2年制の応用課程を活用し、特定専門課程と特定応用課程を設置し、両者を一体的に運営して4年制学士課程「生産技術」を設置したのは2012年4月からであった。その最初の卒業生70名弱の内の20数名が職業訓練指導員を目指し機構に入所し、本校の指導員養成課程に入学することになった。これら学生の中の優秀な者を対象に、修士課程として職業能力開発総合大学校 長期養成課程 職業能力開発研究学域を設置することが決定され、学位授与機構の承諾が得られ、この4月からの入学生を迎える段取りになっている。以上により、本校が混乱し、あるいは喪失してきた職業訓練に関わる教育機能が新しい形で全て整ったのである。今後の課題としては、本校を中心に新規の職業訓練指導員を如何に育成し、彼らがTPPを中心にした新しい時代の職業訓練を如何に実施していくか、その結果が単に国内だけではなく、TPP関係国や中国、韓国等へどのように波及していくべきかの時代に入っていることを失念してはいけないであろう。最後になるが、本校にお世話になった時と、今回、本校を退職する時に、「技能と技術」誌の巻頭言を執筆させていただいたのは感謝に耐えない。このような機会を与えていただいたことに対して心より感謝し、本校の更なる発展を期待している。

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