2/2015
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・発達障害と生活のしづらさ,働きづらさ・支援者に求められること前述した通り,平成28年の改正障害者雇用促進法にて障害者に対する合理的配慮の提供が民間事業者に求められてくる.現在,一定の指針は示されているが,具体的にどこまでが合理的配慮となるのかは今後の事例の積み上げで作っていくことが求められている.また同法では,合理的配慮が民間事業者にとって過重な負担である場合は,理由などを説明し,過重な負担でない範囲での合理的配慮を提供することを求めている.また,合理的配慮に関する措置については,事業主と本人で話し合い,決めていくこととされている.場合によっては支援者などに聞くことも可能とされる.現在,障害者を対象とした就労支援では,職業能力の評価を受け,働くために必要な訓練を行って就労をするという過程だけでなく,働く中で職業能力の開発をしたり,実際の職場でインターンシップ等を行うなどをし,就職をする人も増えてきた.就労支援員やジョブコーチが就職活動や職場定着のコーディネートをしたり,職場の従業員が障害者をサポートすることも多くなってきている.職場に障害特性を説明するなど,職場で相談したい配慮について就労支援員やジョブコーチが伝える場合もあ図2 障害別就職者数(東京都)出典:東京都福祉保健局『障害者雇用・就労推進連携   プログラム2014』-6-る.今後,「合理的な配慮」が求められると,そういった機会もますます多くなってくるだろう.働いていく際,主体的に選択をした,自分で決めていく,決めていったという実感がある人の方が,課題に面した際の粘り強さや乗り越えていく力強さが大きい印象がある.支援者側が過度な介入をしてしまうと,そういった実感が持ちにくくなってしまう.「合理的な配慮」を考えていく際にも同じようなことが言える.合理的配慮を障害特性から考えていくのではなく,本人が自分自身のこれからの職業生活において,どのような配慮があれば働きやすくなるのか,自分自身のスキルを職場で活かしていくためにどうすればいいかという視点で考えていくことで,本人や企業の力を伸ばしていきやすいのではないかと感じている.最近では発達障害のある人からの相談が増えてきている印象がある.発達障害について障害特性と言われている特徴をいくつかあげてみたい.発達障害者支援法では,“自閉症”,“アスペルガー症候群”と“その他の広汎性発達障害”,“学習障害”,“注意欠陥多動性障害(以下ADHD)”,“その他の類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現する障害”と定義している.“自閉症”,“アスペルガー症候群”では,社会性(指示されたルールを大切にするが,職場での暗黙のルールに混乱をする,協調性に乏しいあるいは過剰に相手の顔色を気にしてしまうなど),コミュニケーション(言葉を正確に使おうとする気持ちが強い,会話が一方的になる,タイミングよく質問をしにくい,言葉の理解が率直ではっきり言われないと気づきにくいなど),こだわりの強さや興味や行動が極めて限られていること(興味や関心が深く,集中して取り組む,見通しのついたことだと進めやすくなる,複数のことを担当すると,優先順位がわかりにくくなる,時間や場所の変更に不安を感じやすいなど)の3つの特徴がある.2. 合理的配慮と職業訓練

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