2/2015
54/60

年齢に関係なく働きたい受け入れ職場がない価値観に合った働き方過去から今後への動機づけ再就職へ職業スキルの習得地域社会に経験を活かす図2 高齢者雇用に向けた3者の思い高齢者向けの職域開発若手社員への技能継承人事処遇制度の見直しるケースが何と多いことか.こうした意識改革を徹底し,応募書類へ反映させ,面接特訓することが高齢者就職支援の最大の役割でもある.外部からの高齢者雇用を本格化させるには,図2に示すように,事業主側,高齢求職者側,そして能力開発支援側の3者の思いを尊重しつつ,互いにベクトルを合わせることが大事だと考える.共通事項として言えることは,年齢に関係なく働けるか,を命題にした再就職への動機づけと職業スキルの習得である.まず,事業主側であるが,高齢求職者が望む年齢不問の雇用条件を本音で受け止める必要がある.求人情報誌を見た高齢の訓練生から,年齢不問とあったので応募しようとしたが,実年齢を言った途端,断られた,といった苦情が寄せられたこともある.当センターの求人ではそうした事例がほとんどないが,一般の求人では,年齢不問が建前だけ,という実態も少なからずあるようだ.年齢を理由に,応募段階で拒絶するのは好ましくないし,これでは高齢者雇用が進展するはずもない.定年制の廃止と同様,応募職への年齢不問も完全実施しなければならない.高齢者に合った職域開発,人事処遇制度の見直しにも真剣に取り組む必要がある.次に求職者側であるが,何よりも求職を望む高齢者自身が強い意識を持ち,過去の思い出から脱却し,-52-新たな職務に向けた意識改革が必要だ.受け入れ体制ができていない,と相手を責める前に,限られた範囲ではあるが,高齢者向きの仕事を見つけたならば,自身の能力開発に向け最大限の努力をすることが不可欠だと思う.そのための情報はあふれている.当センターのような公共職業訓練校の他にも,国の関係機関やハローワーク,地方自治体が主催する各種就職セミナー,職業相談会,就職面接会,就職支援プログラム,さらには民間企業にも同様のプログラムがあり,高齢者雇用向けの能力開発や就職支援のメニューには事欠かない.後はいかに自分で吸収し,就職にむすびつけるか.そうしたシナリオをきちんと描き,具体的な行動を起こすことがまさに求められる.能力開発と就職支援を担う側の役割から考えると,過去から今後への動機づけを徹底すると共に,再就職に向けた職業スキルを上げなければならない.社会動向を見据え,今の時代に即したプランと行動が問われる.特に,高齢者の就職支援では,自分に合った応募先を探し,厳しい就職競争を勝ち抜くための応募書類を準備し,面接対策にも力を注ぐことが極めて重要になる.話は飛ぶが,就職支援は料理づくりと似ている気がする.就職支援では,最適な就職先選びと応募書類の仕上げ・面接リハーサルが求められる.他方,料理の場合は,メニューを決め,旬の食材を選び,腕によりをかける調理技術が不可欠だ.どちらにも共通な資質は,情熱に支えられた創造力と自己研磨である.そして,これが一番のポイントだと思うが,思いやりの心を抱き続けることであり,その先には相手の笑顔が待っている.参考文献3)では,就職支援の機能についての価値分析を示している.就職率向上に向けた就職支援の価値を定量的に評価した結果,応募先選定,応募書類の完成,模擬面接の3つの項目で機能が高いことを実証した.高齢者雇用も同様だと考える.すなわち,これら3つの項目にどれだけ本気で取り組むことができるかでその真価が決まると言っていい.高齢者雇用の問題は奥が深い.将来的には,高齢者を特に意識しないで済むよう,普遍的な能力開発能力開発支援側高齢求職者側事業主側

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る