2/2015
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から学び,マンション管理に必要な清掃,ゴミ分別,管球交換,植栽管理,PCを使った文書作成を実習する.総合演習では上級救命,認知症サポート,低電圧電気取扱い,排水設備などを体得する.これら2科の入校率や就職率も年々高くなってきている.それだけ,社会的需要があるわけで,まさに高齢化社会の現実を反映しているとも言える.高齢者の能力開発では,年齢に関係ない,むしろ年齢に比例して増大する,対人関係能力と概念化能力という2つを活かす取り組みが極めて有効だと考える.対人関係能力と言えば,まずコミュニケーション力が浮かぶが,他にも感情や思いを引き出す力,動機づけや意欲増進力などが該当するだろう.また概念化能力では,問題提起から状況分析,時系列観念,前例のない問題への対処などが当てはまる気がする.再就職のための自己啓発や研修でこれらを常に配慮する必要がある.今後における高齢者雇用の能力開発を考える時,仕事の側面だけではなく,生涯学習やボランティアと関連づけることもとても重要になると考える.高齢者が仕事を遂行することができなくなっても,生涯学習やボランティアは継続してできるかも知れない.逆にボランティアを続けていれば,それが高齢者雇用に結び付くことも大いにありうる.いずれにせよ,高齢者と言う前に,いや高齢者だからこそ,その雇用に向けた能力開発,その本質に真剣に取り組むことがいかに大事か,当事者自身が強く意識することからスタートしなければならないと考える.某月某日,マンション維持管理科の修了生が就職届けを持参してきた.笑顔があふれていた.実を言うと,この生徒は在校中,なかなか就職が決まらなかった.その理由として,60歳を超えた高齢であることはとりたてて弊害ではなかったが,視力の低下を必要以上に本人が意識していたことがあげられる.これまで,鮮魚のスーパーで調理主体に長く働-51-いていたが,視力に不安を感じて続けていく自信をなくしていた.そこで,マンション管理員という新たな職種に活路を見出そうとした.しかし,その道も険しく,求人票を見て幾度となく書類を送っても次に進めないことが多かった.やっと面接にこぎつけても,内定に至らず,が続いていた.就職先探しに加え,応募書類の添削や面接対策にも力を入れた.及第点に達するまで,実に4回以上,就職相談の機会を設け特訓した.懸命の努力が実り,決まった就職先は元の職種に近い鮮魚の販売である.マンション管理員に限定せず,本心から自分がその職務に興味を持てて,就労したいと願う仕事を見つけたのが幸いしたと言える.このケースを通して,訓練生,特に高齢者の就職支援について改めて考えさせられたことがある.それはいくら訓練技術を積もうと,自分のやりたいこと,得意な分野から外れると,どうしても不安が表情に出る.それは求人側に見透かされる結果となり,なかなか就職には至らない,ということだ.もう少し深く検証してみると,マンション管理の訓練で学んだ中に住民とのコミュニケーション力と安全管理がある.これらは販売職でも極めて大切なことであり,基本から学ぶ機会に恵まれたことはプラスになったに違いない.何よりも鮮魚はなじみがあり,調理から販売に変わっても,その知識や技能が大いに活かされる.この自信は大きい.そして,就職支援の機会を何回も得て面接対策もでき,さらに就職への可能性が高まったと考えれば納得がいく.この教訓から,高齢者の求職者に求められるのは,できるだけ興味ある分野・やりがいのある仕事を見つけ,その職業スキルを身につけ,就職支援を有効活用し,自信を持って応募することが必要だと再認識させられた.高齢者の就職支援は,求職者の社会経験が豊富な分,一見して楽そうに思えるが,必ずしもそうとは言い切れない.前職への思いが強すぎ,再就職先へどう取り組むか,この舵取りがおろそかになってい4. 外部からの高齢者再雇用のための就職支援

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