2/2015
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東京都立城南職業能力開発センター 工藤 孝之近年,加速している少子高齢化に伴い,高齢者雇用が注目を浴びるようになった.今後,労働人口がますます減少していくのは確実であり,とりわけ,高齢者人材の活用をいかに図るか,が極めて重要な課題に浮上した.高齢者雇用に関しては,65歳まで働けるよう,企業に柔軟な対応を求める施策が粛々と進められている.この背景には,自社内の継続雇用であれば,技術・技能の伝承が期待される効果もあり,労働時間や体力面に配慮した上で,職務配置など働き方を工夫すれば,たとえ高齢者であっても十分,戦力になるという共通認識が事業主に広く浸透されてきたことがある.ところで,高齢者雇用の本当のゴールは,自社内にとどまらず,外部からの高齢者雇用をどう実現するか,にあると考える.こう論ずれば,「自社内で高齢者雇用を継続するだけでも大変なのに,外部から招聘する余裕などあるものか」とたちまち反論されそうだ.だが,高齢者を採用するメリットや必要性が本当にないのか.少子化の流れを食い止めることの難しさに加え,何よりも,将来の高齢者とは現在の若者である,この意味を冷静に考えれば,決して机上の空論ではないと思われる.現在,私は都立城南職業能力開発センター(当センター)で就職支援の業務に携わっている.企業の採用担当者や当センターで学んでいる訓練生と真正面から向き合い,求人情報の入手・分析と,就職に-48-向けた職業講話や個別の職業支援としての応募書類の添削・面接特訓に追われる毎日だ.そうした中で,当センターには高齢者向けの訓練科目もいくつかあり,日頃から高齢者雇用のあり方にも強い関心を抱いている.最近,企業の採用担当者と対話する中で,感じていることがある.それは,職務遂行能力さえあれば高齢者でも積極的に採用したい,と考えている企業も少数ながら存在することだ.昨今の人材不足が根底にあるのは疑う余地がない.その一方で,職を求める高齢者側の熱意や職業スキルがうまく企業側に伝わらない現実がある.そうした壁をどう打破したらいいのか.高齢者自身が再就職を実現するために何を心がけ,それに見合った就職支援をどうするか,新たな発想から解決の糸口を見出すことが求められているような気がする.こうした視点に立って,今後の高齢者雇用に向けた就職支援,特に外部からの高齢者雇用を念頭に,そのあり方について提言してみたい.平成25年4月1日から「高年齢者雇用安定法」が施行された.これにより,定年を65歳未満に定めている事業主は,その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため,希望者全員を継続雇用制度の対象とすることが必要となった.具体的には,次の3点から選択することになっている.①定年の引き上げ 1. はじめに2. 問題提起今後の高齢者雇用に向けた就職支援のあり方

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