2/2015
3/60

有限会社まるみ名刺プリントセンター 三鴨 岐子企業内に支援の必要な障害を持つ社員がいる場合,人事担当者や経営者自らが支援者として,障害のある社員の支援をすることが求められる.だがその時に,支援者としての力量を問われても困るというのが実情だろう.ほとんどの企業経営者は福祉分野には疎く,ましてや各障害の知識は望むべくもない.そもそも,企業では,一定の社会人基礎力のようなものを満たした人だけが働くものだという「幻想」が労使双方にあると思う.大企業なら,採用の段階で一定ラインに満たない人を断ることもできるかもしれないが,中小零細企業では,そうそう選んでもいられないのが実情だ.大企業にうまく馴染めなかった若者や,全くの未経験者である新卒学生なども戦力にしていかなければならない.それなのに,まだ「即戦力」が応募してくるはずだという幻想から,そろそろ目覚める時期にきているのではないだろうか.社会人基礎力を満たしていない健常者も,生活の一部にハンデのある障害者も,個人の職能を開発すること,それを職場もしくはチームで見守り,支えなくてはならないのは同じなのである.実は,経験豊かな経営者は,自ら意識しないうちに,社員を教育すること,人を育てることに長けている.それまで障害者に全く触れてこなかったような人でも,障害のある人が働けるように指導していくことは,一般的に考えられているよりも容易なのではないか,と感じている.そこには各障害に対す-1-る医学的な知識はあまり必要ない.必要に応じて,障害当事者が職場やチームメンバーへ配慮要求をし,小さな改善を積み重ねていけばよいのだと思う.各障害への知識を,支援者や障害当事者や経営者が必要だと感じている間は,障害者雇用はなかなか進まない.すこし乱暴な言い方かもしれないが,よくわからないままでも,思い切って受け入れてみて,一緒に試行錯誤しながら,経験値を増やしていくことでしか,前には進めないと感じている.就労したい気持ちがありながら,経験不足のため技能に自信がなかったり,病気のために生活リズムがうまく作れなかったりなどの課題を,訓練をすることにより改善し,就労に繋げるのが「就労移行支援事業所」である.障害者総合支援法(平成25年施行・前身は平成18年施行の障害者自立支援法)に基づく福祉サービスである.実習生はこの福祉サービスの利用者で,「就労移行支援事業所」内での訓練を経て,事業所からの紹介により,様々な企業へ訓練に通う.現在,就労移行支援事業所や支援機関から実習生を受け入れる企業は採用前提の受入れであることが多い.採用する予定はなく,純粋な実習受け入れを行っている企業は少ないだろう.しかし,採用する気持ち,予定が全くない状態から検討段階に入るための意識変革には,実際に障害のある人と過ごすことが効果的である.その意味では,いきなりの雇用1. 障害者雇用が進まない理由2. 経験としての就労実習の有効性―技能開発とそれを促す組織風土―中小企業における障害者雇用と就労訓練実習生受入れについて

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る