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東京都視覚障害者生活支援センター 就労支援課 石川 充英就労移行支援事業は,障害者総合支援法に基づく一般就労を目指す65歳未満の障害福祉サービス受給者証(以下,「受給者証」という)の交付を受けた障害者のための障害福祉サービスである.東京都視覚障害者生活支援センター※1(以下「センター」という)は,平成22年4月より就労移行支援事業を行っている.センターの就労移行支援の対象者は,1)画面読み上げソフトとキーボード操作によりパソコンを使い,事務的職業への就職をめざす視覚障害者(以下,「事務的業務希望者」という),2)あん摩マッサージ指圧師,きゅう師,はり師(以下,「理療師」という)の国家資格を有し,企業内マッサージ師(ヘルスキーパー)や高齢者施設での機能訓練指導員への就職をめざす視覚障害者(以下,「マッサージ業務希望者」という),3)在職中(休職・研修を含む)で,視力低下により担当業務の遂行が困難な状況で,自治体がその状況を認め受給者証の交付を受けた視覚障害者(以下「在職者」という)である.視覚障害者を対象とした就労移行支援の事業所や職業訓練校は全国的には少なく,大都市圏に集中している状況である.東京ではセンターのほかに,日本盲人職能開発センター,視覚障害者就労生涯学習支援センター,視覚障害者パソコンアシストネットワーク(SPAN)が訓練を行っている.本稿の目的は,センターにおける5年間の就労移行支援利用者の利用開始時と利用終了時の就労状況,就労後の定着支援の現状と課題を明らかにすることである.これらより,今後の視覚障害者の就労-10-移行支援の新たな方法を検討する基礎資料を得ることにその意義がある.2.1  研究対象者平成22年4月から平成27年3月までにセンターの就労移行支援の利用を終了した視覚障害者(以下「利用者」という).2.2  研究方法研究方法は,1)利用者の年齢,性別,障害程度等級の基礎データ,2)利用開始6ヶ月前と利用開始時の就労・離職状況,利用目的,3)利用終了時の就労状況,4)就労後の定着状況について,利用者の状況調査のデータから必要である項目を抽出し,記述統計を用いて分析を行った.2.3  倫理的配慮データの取り扱いと分析については,プライバシーの保護,データの匿名化などの個人情報保護,データの保管方法などに関する事項について倫理的配慮を十分に行い実施した.3.1  研究対象者の概要平成22年4月1日から平成27年3月31日までの5年間の利用終了者は73名で,性別は男性42名,女性31名であった.利用開始時の平均年齢は38.8歳,年齢階層別で見ると18歳以上20歳未満4名,20歳以上1. はじめに2. 研究方法3. 結果と考察視覚障害者を対象とする就労移行支援事業の活動状況に関する一考察

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