2/2015
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図3 「働きやすさ」のアンケート結果・職業訓練に際するキャリアカウンセリングの重要性発達障害のある人の職業訓練について考えてみたい.就労をするため,職場が求める技術を身につけることを目的にして職業訓練を利用する人が多いと思うが,発達障害のある人への職業訓練では,キャリアカウンセリングがあるとより効果的であるように思う.つまり,「技術」を身につけるだけでなく,指示の受け方や質問の仕方,仕事をする際にどんな工夫があった方が働いていきやすいのかなどを試しながら確認をし,キャリアカウンセリングの中で自己理解を進めていくことである.例えば,職業訓練の場では自分のもののように習得をしていた技術だったとしても,いざ職場に入ってみると,やり方が少し違っていたり,職場ごとのマニュアルがあったりして,思うように力を発揮できない場合などがある.発達障害のある人の就労では,技術だけでなく,技術をどう活かしていくかという視点も欠かせないだろう.-8-また,今後,発達障害であることを職場に伝える場合,合理的配慮について聞かれることが多くなるだろう.そうした時に,職業訓練とセットで障害特性について考える機会があれば,業務をするにあたって,どんな配慮が必要なのか,どう職場に伝えるとわかりやすいのかが整理されやすくなる.こうした障害特性について考えることは,その人のライフキャリアを考えていくことにもつながっていく.これまでの経験から発達障害のある人と自己理解について考えていく際に重視しているポイントについて整理をしたい.①本人主体で進めること,②取り組む際に目的をはっきりとすり合わせること,③他者と比べて考えるのではなく,本人が感じることを元にして考えていくこと,④どんなコミュニケーション手段でも大丈夫だという安心感が抱けるような環境であること,の4点である.まず,本人主体で進めることについては,ここでは選択と決定を本人で行うことと言い換えられる.企業に配慮事項を伝える際,現状だと支援者がアセスメントした結果を元にして伝えることが多い.合理的な配慮について考えていく際に,本人が企業にどんな配慮事項を伝え,どこまでの範囲で障害特性を伝えるのかを,本人が主体的に決めて選択していけると,その後の就業生活で様々な困難を乗り越える力強さ,柔軟性にもつながっていきやすい.取り組む際に目的をはっきりとすり合わせることについては,本人が主体的に進めていくうえでも欠かせないように思う.発達障害のある人の支援に限ったことではないが,本人が取り組んでいきたいと感じていなければ,自己理解の作業はうまくいかないことが多い.目的をすり合わせていく際には,本人が職業訓練を受け,何をしたいのかを確認していく.可能であれば,本人のこれまでの職業生活も振り返り,キャリアカウンセリングを行うことが求められる.次に,本人が感じることを基準に話をすることについては,前述したアンケートの結果でもそうだったが,どんなところに働きにくさを感じているかは一人ひとり,内容も程度も異なる.本人が感じることを聞いていき,その中でどんなところが大変だっ

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