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3.4 壁せん断試験 壁せん断試験は民家タイプと土蔵タイプに大別し,既存建築物の性能ならびに修復効果の性能について検証している。平成24年度までに民家タイプの既存建築物の性能について検証した3),4),5)。平成25年度は木造民家用の既存の真壁ならびに修復後の真壁(図14)の比較検証と既存の土蔵用の大壁(図15),さらに補修方法の提案として,構造用合板の上に下地に新建材を用いた下塗り材の上に漆喰を施工した壁(図16)の壁せん断試験を行った。 試験方法は木造軸組工法住宅の許容応力度設計6)に記されている柱脚固定式を採用し,見かけのせん断変形角を1/600rad~1/30radまでの同一変形角を3回繰り返す正負交番繰り返し加力を行った後,1/20radを1回繰り返し,最後に1/10rad程度を目安に引き切りとした。 評価方法については完全弾塑性モデルを用いて各種データの算出を行った。完全弾塑性モデルとは壁のせん断力をエネルギー量に置き換えてそれぞれの壁を比較する木質構造耐力壁の評価方法としては一般的な指標である。図12 中塗り圧縮試験結果図13 中・荒塗り圧縮試験結果技能と技術 4/2014図14 真壁試験体概略図図15 大壁試験体概略図図16 補修壁試験体概略図-4- 表1に試験結果の詳細を示す。また,図17にバイリニアを用いたエネルギー量の比較結果を示す。試験結果から,既存の真壁については建築基準法告示で示される1.5倍を大きく超える壁倍率となった。また,真壁の修復壁に関しても告示の値を十分に上回っており,修復方法についても安全性が証明された。土蔵壁についても,ばらつきはあるが,設計に使用されている壁倍率を大きく上回る構造的性能を持っていることが証明された。土蔵壁の構造性能を評価した研究は全国的にも大変希少である。今後土

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