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 さらに産業競争力会議「雇用・人材分科会」中間整理(平成25年12月26日発表)においては,ジョブ・カードの抜本的見直しが提言された(以下『 』の文が引用)。 『ジョブ・カードは自身のこれまでの職業経験などを振り返り,将来に向けた目標を考えるためのツールとして活用されてきた。一方,取得者のほとんどが職業訓練受講者となっているなどの課題もある。このため,これまでの活用状況等を精査し,例えば,「キャリア・パスポート(仮称)」として学生段階から職業生活を通じて活用できるものとすることや,企業及び働き手の双方にしっかり浸透する仕掛けとして,雇用保険二事業の助成金支給の必要条件とすること等,労使の理解を得つつ,抜本的に見直す。』と提言されている。このように社会情勢は急速に変化してきている。 一方,学生の気質については,中央教育審議会の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」1)により,中学校や高等学校でキャリア教育が充実していく方向にあり,今後は歳相応にキャリア発達した学生が,育成されていく可能性はある。しかしながら,今後,数年間は社会(雇用)情勢と学生の気質の変化に注意して対応していく必要があると思われる。また,現在キャリア・コンサルタントの質が問題となっており,平成24年度「キャリア・コンサルティング研究会」の報告書10)(特に職業訓練機関等におけるキャリア・コンサルティング部会の報告書)においては,さまざまな課題が把握された。表4に把握された課題(抜粋)を示す。 課題の大きな原因となっていることは,キャリア・コンサルタントに必要な能力・スキルが不足していることにあると思われる。このことは平成24年度の登録キャリア・コンサルタント(ジョブ・カード講習修了者)の4割が職業訓練機関等所属の者のであることや,登録キャリア・コンサルタント約3万5千人(平成23年度末)のうち約8割がキャリア・コンサルタントの資格を有していない状況にあることからも垣間見ることができる(統計データは報告書より引用)。技能と技術 3/2014 また報告書では,『職業訓練機関等においては,訓練指導員がジョブ・カード交付の担い手となり,受講生に対して個別相談を行っていることが多いが,訓練指導員は訓練分野に精通しており,訓練分野の業界についても詳しく,その職種での就職状況も踏まえた相談を受講生に対して行うことができると考えられるため,訓練指導員がキャリア・コンサルティングを実施することには一定のメリットがある。しかしながら訓練指導員であっても,キャリア・コンサルティングのスキルがない場合にはキャリア・コンサルティングが効果的に実施できないことから,キャリア・コンサルティングのスキルを身につけさせる必要がある。さらに,訓練指導員がキャリア・コンサルティングのスキルを習得し,相手を共感的に理解するカウンセリングの姿勢を身につけることによって,受講生主体の指導の実施につながり,訓練そのものにもよい影響を与える可能性がある。』としており,第9次職業能力開発基本計画においても,訓練指導員等キャリア・コンサルティング実施のための十分な時間,適切な相談場所,必要な数のキャリア・コンサルタントが確保されていない。ジョブ・カードを作成することにばかり意識が集中しがちである。キャリア・コンサルタント資格がない者がジョブ・カード講習を受講するだけでは,キャリア・コンサルティング及びジョブ・カード交付を適切に実施できるようにはならない。「ジョブ・カード講習受講後のフォローアップ体制が整備されていない。訓練分野に精通している訓練指導員がキャリア・コンサルティングを行うことにはメリットも多いが,指導する姿勢をとりがちで,共感しながら話を聞くのは得意でないことが多い。作成したジョブ・カードが求人の応募書類として使用できない。 等-6-表4 把握された課題(抜粋)把握された課題

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