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―立体カムを用いたPick&Place装置の製作 その1― Pick&Place装置は,工場の自動化ラインなどで所定の位置にあるワークをつかみ,上昇,移動,降下,置くという一連の運動を行う装置である。本装置は,機械要素と制御要素を組み合わせて製作され,装置の動きの面白さもあって,職業訓練の受講生にものづくりの楽しさをかき立て,良い訓練教材となり得ることから,総合的な実習課題として多くの教材が開発されてきている。 一般的なPick&Place装置の教材としては,制御の簡単さとフレキシビリティーの観点からアクチュエータとして空気圧装置,ソレノイド装置,制御モータを用いてプログラムコントローラ(PLC)やマイコンで制御するものが多く作られてきた。しかし,これらの課題は機械的な要素は少なく,制御関係の要素が多く含まれているため,制御関係の訓練科としては優れているが,機械加工や機械的な機構などを主体に学ぶ生産技術科などの機械加工関係の訓練科の受講生にとっては問題があった。 そこで,当時担当していた専門課程の生産技術科の受講生の総合制作実習の課題としてリンク,カムなど機械的な機構で主に構成されるメカニカルPick&Place装置を課題として適用した。この装置の製作には,カムやリンク等の機構学的な知識だけでなく,汎用工作機械やNC工作機械の機械加工および組み立て調整などの技術と技能を必要とするため,生産技術科で学ぶべき教科と合致する点も多い。課技能と技術 3/2014題の加工と設計には多少難度があるため,受講生にものづくりの面白さを伝え,同時に難しさも知り,達成感のある良い課題と思われた。その結果,いろいろな機械要素を組み合わせた装置を7年間にわたり,専門課程の総合制作の課題として取り組んできた。受講生による課題の評価も非常に高く,学生自身も積極的に実習に取り組んでいることから,ものづくりへの動機づけにも非常に良い課題と判断された。 本装置の製作に取り組んだ初年度は,専門課程2年2名の受講生で行い,基本的な構造や設計の仕方を学ぶため,職業能力開発総合大学校の応用課程で開発されていた標準課題を参考に模倣することから始めた。平成12年度と平成13年度標準課題「機構形Pick&Place装置の制作」1)および「メカニカルPick&Place装置の制作」2)の報告から,それぞれPick&Place装置の本体とインデックステーブルを参考に製作を行った。図1に初年度製作した装置を示す。ワークを移動する本体は平面カムとリンク機構を用い,テーブルの間欠運動はゼネバ歯車機構を使用している。その後,この装置をもとに各種の平面カム,リンク,立体カムなど機械要素を適用した課題に毎年挑戦してきた。 ところで,最近企業のニーズから機械関係の訓練施設に5軸のマシニングセンタが導入され,訓練に取り入れられ始めている。5軸マシニングセンタの訓練課題の開発は,加工時間や難度の問題から,まだ試行錯誤している状態と推測される。 これまで製作した装置のうち,立体カムを用いた岐阜職業訓練支援センター幾瀬 康史-46-1.はじめに「おもしろ機構」工作室Ⅴ

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