3/2014
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げている。どこをどのように押さえ直して削ったのか,見ただけでは全くわからない。図4は工具の当て方を表している。工具と作品が干渉しないように複雑な動きで削っていることが想像できる。 試作品を請け負うからには「絶対にできないとは言えない。」を企業風土とする大槇精機,コンテストに取り組むことでメリットも大きかったようだ。◦作品づくりに関心を寄せる若者や企業が増えた。◦ 技術レベルが高まり,それまで何十時間も掛かっていた作業が数時間でできるようになった。 その一方で,作品づくりに携わる人と通常の業務をしている人との意思疎通を図ることにも気を遣った。しかし,全員が加工大好き人間の社員にその心配は無用だった。作品を担当しない社員からの差し入れやコミュニケーションで,社員が一丸になることができた。試作の状況を社員全員が見られるようにウェブカメラを設置し,作品づくりに懸ける思いを共有できるようにもした。「試作は考えていても進まない。最初からうまくいかないのは当たり前。-37-知恵は出るもの。トライ&エラーを繰り返すことで加工の限界が見えてくる。」とのこと。 現在,ドイツ製の5軸加工機を8台導入し,日々新たな試作品に挑戦する大槇精機,「通常の仕事は当たり前!」「取引先に依存したらダメ!」「忙しい中で提案することが重要!」と大町社長は言う。コンテストへの挑戦は,「現状に甘えない」という強い意志の表れである。 高速切削加工は,金型をはじめ航空機やロケット等の部品加工のほか,携帯電話のケース加工でも使われるようになった。一定以下の数であれば金型をつくるよりも削り出しのほうが安くて早く作れるという。もちろん,二次加工がいらない美しい仕上げ加工が可能である。これまでの切削の常識が変わりつつあるといえる。 一方,こうしたデジタル加工技術の進歩は,加工機械とソフトに依存するだけに,加工機とデジタルデータがあれば理論的には,どこでも同じように加工することは可能である。デジタル加工技術が普及する中で差別化を図るためには,常にチャレンジ精神を欠かすことはできない。 最近注目を集めている3Dプリンタの可能性は未知数であるが,刃物や押さえを必要としない分,時間は掛かるが,誰でも簡単にモノが作れてしまう。デジタル加工にはそうした側面もあるが,機械の性能を極限まで引き出す未知のノウハウは無限にある。曲面を帯びたドイツ製の工作機械や近未来的な社屋,そしてコンテストへの挑戦は,他社には負けない美しい仕上がりを追い求める大町社長のこだわ研究ノート工具(エンドミル)図3 「王冠」の底面図4 工具のアプローチ図5 「ヘルメット」と「王冠」と大町社長

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