3/2014
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 スポーツカーや飛行機のカッコよさは,単なるデザインにあるのではなく高速走行や空を飛ぶために必要な流体力学などによって導かれた機能美にある。機能美は性能の高さを表すバロメータともいえる。鍛えられた肉体からも機能美が感じられる。一方,戦うための道具である刀や兜かぶとなどには機能美としてのカッコよさと装飾品や芸術品としての美しさが備わっている。 古来より人々は,機能性だけでなく装飾性やデザイン性を大事にしてきた。カッコよさや美しさを求めることは自然の摂理であり,現代のものづくりにも欠かせない要素である。一部には若者の車離れが進んでいるとも聞くが,ドイツ車を筆頭に輸入車の台数は確実に増えている。カッコいい車はあこがれであり日本車も負けていられない。ものづくりの魅・鎧よろい力を出すには,機能とデザインがマッチしていなければならない。たとえ,機械に組み込まれる一部品であっても,精度だけではなく美しい仕上がり求められる。 ものづくりは美しくカッコよく,そしてワクワクするものでなければならない。ものづくりに携わる若者にそうした魅力をどう伝えていくか。元気でカッコいいものづくりを伝える取り組みについて紹介する。 ㈱森精機製作所が主催する切削加工ドリームコンテストは,今年で第10回目を迎える。製品加工部門,試作テスト加工部門,金型造形加工部門,微細加工部門,アカデミック部門の5部門からなるコンテストには毎回,切削加工の限界に挑戦する素晴らしい作品が出展され,話題になっている。中でも第研究ノート職業能力開発総合大学校 基盤整備センター平塚 剛一-35-1.はじめに2.切削加工ドリームコンテスト概要 日本における生産技術や製造技術等を総称して“ものづくり”という。町工場が姿を消す中,鋼をたたいたり,削ったり,溶接したりする“ものづくり”の現場を見る機会は少なくなった。一方,CADソフトや3Dプリンタの発達により,コンピュータで絵を描けば居ながらにしてどんなものでもできてしまうような錯覚に陥る。しかし,実際の“ものづくり”は,そう簡単ではない。加工のデジタル化が進む中で他社との差別化を図るためには,機械やソフトの性能を限界まで引き出しながら独自の加工ノウハウを蓄積していく必要がある。また,若者に“ものづくり”のすばらしさと重要さを,わかりやすく啓蒙していかなければ後継者は育たない。 今,“ものづくり”のコンテストに挑戦し国内外から注目を集めている企業がある。技を極めた作品づくりは,社員のヤル気とレベルアップにも一役買っている。人材も集まってきている。そこで,こうした企業の取り組みを紹介するとともに,魅力を感じさせるカッコいい“ものづくり“について考えてみたい。ものづくりの魅力を伝える

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