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も絡み,就職支援ではその場で添削した書類は返却しクローズしているからだ。今後の課題でもある。② 就職支援に求められる資質と能力 就職率向上で,避けて通れないのが就職支援員の存在である。就職支援員にとっては,求人側と生徒とのマッチングをいかに図るかが永遠のテーマである。その課題を解決するには求人情報の分析力が欠かせない。 また応募書類の親身な指導を行うためには文章力が必要である。応募書類は,よりわかりやすく具体的に表現しないと求人側には伝わらない。「ここの表現はアピールしない」と指摘するのは簡単である。しかし,生徒はどうすればアピールできるか,それが知りたくて相談に来ているのだ。一般論でなく,生徒の原稿下書きをタイムリーに完全原稿に仕上げることも必要である。結局,自身が文章力を付けるしかない。 社会動向を意識した豊かな発想力も欲しい。目まぐるしく変わる社会の動きや雇用情勢に応じて,過去のやり方でなく時代に合った考え方や手法で取り組んでいく。そのためには自身のブレークスルーが必要になる。自ら情報を発信する気概も持つべきである。就職支援についての勉強会やセミナーの企画がもっと増えることを期待している。 就職支援員として,最も大事なことは情熱ではなかろうか。修了時期が迫って来ると,急ぎの就職相談が増え,始業前から生徒の列ができることもある。そんな場合でも笑顔で迎え,リアルタイムに応募書類の添削や面接特訓で応える。それくらいの情熱を持って対処するのは,当然の責務だと考える。 学生の就職問題に関して,高瀬拓士氏が参考文献3)で示唆に富む記事を書いている。その中で就職支援に関わるキャリアカウンセラーに対しては,「自分自身の就職観を持つために必要なヒントを提供することが大事」と述べている。私もまったく同感だ。価値観を共有できる職場,やりがいのある仕事,そして全力で取り組めるか,まさにこれが就職技能と技術 3/2014-34-1)「VALUE ANALYSIS IN SYSTEM EQUIPMENT MAINTENANCE」Takayuki Kudou,SAVE PROCEEDING INTERNATIONAL CONFERENCE MAY 2-5,1993,FLORIDA USA2)東京都立城南職業能力開発センター「事業概要 平成25年度版」2013年8月発行3)高瀬拓士,職業能力開発技術誌『技能と技術』「就職問題を考える」4/2013 を考えるうえで最も大切なことだと思うし,そのためにも就職支援に携わるわれわれ自身がきちんと就職観を確立しておくことが求められている気がする。 ところで,就職率の向上はさまざまなメリットをもたらす。就職率が上がると,口コミ,メディア,高校,ハローワークなどあらゆる場面で,絶好のPR効果となる。これは応募者増加・入校率アップにつながる。入校生が増加することになれば,指導員や職員にとっては大いに仕事の励みとなる。訓練校の存在価値も上がるであろう。当然,求人側の関心も高まり,求人需要を掘り起こすことにつながる。求人数が増えれば,質のいい求人確保にも期待が出てくる。結果として,より効果的な就職支援が推進されることになる。このように考えると,就職率の向上はさまざまな相乗効果を引き起こすわけで,実に意義があることだと改めて認識させられる。 雇用問題が大きな社会問題となっている今日,職業訓練校への期待は重く,その現場の一端で関わっているわれわれ就職支援員に課せられた責任も,決して軽くはない。 そうした背景を踏まえ,就職率の向上をテーマに,就職支援の価値分析を行い,またいくつかの就職ファンクションについて,それがどう影響するのか,就職支援員からの大胆な仮説と論理展開を盛り込み,できるだけ定量的な分析を試みたつもりである。 指導員の立場でない一介の就職支援員から,よくある組織の成果事例でなく,個人としての考え方を提起した。ささやかな小論ではあるが,就職支援のあり方を論議する場となれば望外の喜びである。<参考文献>7.おわりに

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