3/2014
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求人票を大量に出されるケースも少なくなく,必ずしも生徒ニーズに合っていないこともある。 この分析から,改めてわかったことがある。求人の件数を集めるのはもちろん重要であるが,同時に,応募したいと思う魅力ある求人をいかに開拓するか,すなわち質の確保も,とても大事なのだ。 就職支援の機能評価では,応募書類の完成,模擬面接,求人開拓のパラメータが高くなった。また,仮説では,就職は最終的に自分との戦いであり,就職観を自己完結することが大事だと述べた。その裏づけとして,年齢,応募率,求人数にはさほど影響しないことも実証した。これらの結果,就職率を高めるには就職観をきちんと植え付けることが基本だと考える。 ところで,就職観とは何か。平たくいえば,こういう職業に就きたい,こういう仕事はしたくない,ということだと思う。つまり,就きたい仕事の内容をきちんと把握しているか,この仕事なら全力で取り組めると強く決心したか,そうした応募職への思い入れが就職に結び付く原動力となるはずだ。労働対価の概念もしっかりと理解しておく必要がある。生徒の中には高校を卒業してすぐに入校した人,バイトだけの職業経験の人もいる。時給でしか考えることができない人も少なくない。一般管理費や適正利益を含め,企業経営活動と対比させた労働対価の社会常識も,身に付けておかねばならない所以だ。 同時に,たどたどしくていいから,就職に臨む具-33-体的願望や本音を出すことも忘れてはならない。そうした心の叫びが求人側の心に響く。これは応募書類も面接も同じである。 その応募書類であるが,書類選考を突破する鍵であり,就職率を高めるうえでレベルアップが欠かせない。これは図1からもわかるように,就職支援機能の最大のパラメータでもある。応募書類のレベルアップは単に就職テクニックではない。自己プレゼンそのものであり,自分の長所を引き出す絶好の機会でもある。まさに就職獲得の有力な武器となる。 応募書類のレベルアップには就職支援の果たす役割も少なくない。就職を決めた生徒たちと雑談すると,応募書類を添削してもらったことがとても良かった,と異口同音に語ってくれる。応募した仕事内容の話はできるが,いざ自分のこと,特に志望動機や自己PRをプレゼンすることは,結構苦手なようだ。作文する機会も少なくなっている昨今,就職支援員と二人三脚で求人側の心に響く応募書類を仕上げることが待ったなしといえる。 ある現場職人系科目の指導員からうれしい報告を受けたことがあった。私事で恐縮だが,現職に就いてすぐに取り掛かったのが応募書類の添削である。その結果,過去には大半の生徒が書類選考をクリアできなかったが,ほぼ全員が面接に進めるようになった,とのこと。書類選考のクリアが就職への第一歩であることを考えれば,こうした取り組みこそが,まさに今,われわれ就職支援員に求められているのかもしれない。 今後のために,就職率向上に関して,就職支援の立場から,次の2点について触れる。① 就職支援の定量的評価 前述したように,就職支援の機能として,応募書類の完成,模擬面接を高評価とした。これらは生徒に密着した就職支援のゴールでもあるが,どれだけ効果があるのか,実証にまでは至っていない。生徒にどう対処したか,回数や中身のデータから分析することが必要だが,実はこれが難しい。個人情報と調査研究報告図4 就職率と求人件数の相関図5.まとめ:就職観を高めるために6.今後のために

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