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① 入校者の思い 職業訓練校に入校する生徒たちには,職業スキルを習得して少しでも条件の良い会社に就職したい,いざ入校した科で自分の能力を磨くことができるのか,就職可能な好条件の求人が確保されているのか,高齢者だけど就職に支障はないのか,就職支援はきちんとやってくれるだろうか,などさまざまな期待や不安が付きまとう。② 企業求人側の思い 企業求人側としては,向上心のある生徒が応募してくれるだろうか,職務に取り組める基礎的な職業スキルを身に付けているだろうか,社会人としてのマナー・コミュニケーション能力が備わっているか,などの思いが交錯する。③ 職業訓練校の思い 職業訓練校の思いもある。訓練スキルを習得させるのは当然として,条件のいい求人を開拓できただろうか,応募書類を書類選考クリヤーのレベルまで引き上げることができたろうか,就職相談に対して100%その要請に応えられただろうか,など反省点を含め生徒の受け止め方も気になる所だ。 さて,就職支援というサービス機能は誰もが理解している概念であるが,その本質まで踏み込んだ考察はなかなか見当たらない。そこで,就職支援サービス機能について,その価値から考えてみた。 一般に価値を上げるには,できるだけ少ないコストで機能を高めるべきである,と価値工学的には知られている。式で示すと, 価値=機能/コスト  ………………………⑸ これを就職支援に当てはめたらどうなるか。実をいうと,サービス分野での価値分析はあまり例がないが,かつて参考文献1)で,訓練装置の整備価値を考察したことがあった。訓練装置の整備価値は訓練装置の整備機能を訓練コストで除したものとし,訓練装置の整備機能の因子は稼働率,改修実施度と定義づけた。これを応用して,就職支援という新たなサービス価値を次のように考えた。技能と技術 3/2014-30- 就職支援価値=就職支援機能/就職支援コスト  …………………………………………………⑹ ここで, 就職支援機能=f(就職決意,求人情報,就職要領)  …………………………………………………⑺ ⑹,⑺式から,次のことがいえる。 就職支援の価値は,できるだけ少ない人手と時間で,求職者に対する就職決意を促し,求人情報を入手・分析したら求職者とのマッチングを図り,就職獲得に向けた応募書類のレベルアップや面接攻略を行うことができるか,で決まる。 ただ,これではあまりにも定性的すぎる。もっと定量的に分析ができないものか。そこで,就職支援パラメータを決め,それらの重要度と有効度を掛け合わせて評価することを考えた。 具体的にはDARE法(Decision Alternative Rate Evaluation system)を応用する。DARE法は,使用者の立場で各機能分析の重要度を比較・評価し,その比率をもとにコスト配分し,機能評価値を求めるものである。 図1は上記に基づき,就職支援価値についてケーススタディしたものである。図1に解説を加える。まず,就職支援パラメータとして10項目を選択した。重みは,仮の重みづけ係数を,下から順に隣り合った2つの就職支援パラメータについて判定する。具体例として,就職後相談=1とした時,その上の再就職支援を1.2倍と想定した。このように順次,各就職支援パラメータの仮重みづけ係数を決める。 次に,全体からみた比較をするために,修正重みづけを行った。これは下から順に決まった修正重みづけ係数に,仮の重みづけ係数を掛け合わせていく。重要度は修正重みづけ係数の合計からの比率で算定する。これにより,就職支援パラメータの合計を,100%とした時の就職支援パラメータごとの重要度が求まる。有効度はそのパラメータが就職実現にどれだけ寄与したかの尺度である。概念的ではあるが,ここでは求人開拓を中レベルの1とし,それぞれについて有効度の度合いの想定値を入れた。 こうして,重要度と有効度を掛け合わせた就職支3.就職支援サービス機能の価値

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