2/2014
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―自立訓練と就労移行支援―1.はじめに 一般的に視力の低下や視野の狭窄・欠損など,視覚に障害を生ずる(以下,視覚障害とする)ことにより,家庭生活や職場生活でのパフォーマンスは低下する。現状を認識したくない,周りに知られたくない,適切な支援機関の紹介を受けていないなどの理由から,無理をして今までの生活を継続しようとする傾向にある。このような状況は,視覚障害者自身のQOL(生活の質)の低下や人間関係に支障をきたすだけではなく,家族や職場など周囲の人々にとっても身体的,精神的な負担が増加することになる。そのため視覚障害者が、家庭や職場でQOLの向上した生活を継続して送るためには,視覚障害による不便さや困難さを軽減するための適切な補助具の活用、およびそれらを使用するための技術などを習得するための視覚障害リハビリテーションが必要である。 東京都視覚障害者生活支援センター(以下,センター)は,社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会が東京都から指定管理を受け運営している事業所で,視覚障害リハビリテーションを行っている。対象者は,障害福祉サービス受給者証の交付を受けている視覚障害者で,障害者総合支援法による自立訓練(機能訓練)と就労移行支援の2つの支援サービスを通所にて提供している。 中途視覚障害者に対する自立訓練(機能訓練)は,「日常生活で生ずる課題に対し,保有視覚の活用,補助具の活用,代行技術の習得により,その課題の解決や軽減を目的にした訓練プログラム」1)であり,視覚障害者にとって基本的な訓練と位置づけることができる。その内容は次のとおりである。 歩行訓練士や視覚障害生活訓練専門職員(以下,歩行訓練士とする)が視覚障害者に対して適切な長さに処方された白杖(ロングケーン)による単独歩行を可能にするための訓練である。 歩行訓練の主な内容は,【白杖の操作技術】,【基本的な歩行作業技術】,【情報の利用とメンタルマップの作成】,【公共交通機関の利用】などである。 まず,【白杖の操作技術】では,①白杖の使い方,②入手した情報の処理方法,③手がかりの検出方法などを行う。次に【基本的な歩行作業技術】において,①保有視覚の活用,②聴覚・触覚・嗅覚など視覚以外の感覚から得られる情報の活用,③歩道の歩き方,④曲がり角の見つけ方と曲がり方,⑤道路の横断方法,⑥横断した後の進む方向の定位方法などを行う。さらに,【情報の利用とメンタルマップの作成】で,目的に行くための安全な経路の選択,その経路を移動する際の情報や手がかりの提示と把握,それを頭の中の地図(メンタルマップ)として施設紹介東京都視覚障害者生活支援センター 就労支援課石川 充英-39-2.1 単独移動訓練(歩行訓練)2.自立訓練(機能訓練)事業視覚障害者のリハビリテーション

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