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4.おわりにずやってみる」という挑戦する姿勢,前向きに取り組む姿勢の重要性を示している。 次に多かったのが『厳しさへの認識』の8件である。実際に就労すると,学んだ技術を発揮する場がない,職場の理解が得られないなどの状況のなかで働くことがある。また,同じ職場に視覚障害者がいないため相談することもできず孤独に感じることもある。そのため,視覚障害者は,これらの状況を乗り越えていくだけの心構えを持つこと,一方支援者側は,十分に考慮したプログラムの作成とそれに伴うポジティブ思考が持てるような支援体制が必要である。さらには,採用側である企業もこの点を理解し,配慮した環境の整備も重要ではないかと考える。 まず,就職した視覚障害者の職業生活,およびその支援体制に関する今後の課題について,3つの視点から考察を加える。 1点目は,パソコン操作技術向上研修の場について充実を図る必要性がある。これは,パソコン操作技術の向上は,仕事の開拓・キャリアアップとなり,新しい仕事と自信の獲得することにつながる。このため,個人の状況に合わせた訓練プログラムによる短期間の研修の場が必要である。また,企業側にはそのような研修の場に派遣できるような支援体制を望む。 2点目は,視力や環境の変化に即応できる歩行訓練体制の充実を図る必要性がある。これは,通勤経路を含めた移動の問題が,視力の低下や環境の変化に最も影響を受けるためである。現状では就職後の件数11875213(件)1)全国視覚障害者雇用促進連絡会「雇用連情報第58号HTML版」2012年9月.2)日本盲人社会福祉施設協議会「在宅視覚障害者のIT化に伴う情報アクセシビリティに関する調査研究事業報告書」2004年3月.3)NPO法人タートル「視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援のあり方に関する研究報告書」2009年3月.4)障害者職業総合センター「視覚障害者の雇用拡大のための支援施策に関する研究」2009年3月.-13-歩行訓練は,サービス提供施設側が費用を負担して対応していることが多く,インフォーマルなサービスとして行っているところも多い。法的整備を行いフォーマルなサービスとして位置づけるとともに,迅速に対応できる歩行訓練体制の充実が必要である。これにより,仕事への影響を最小限にとどめることができ,安心して仕事に取り組む環境ができると考える。 3点目は,パソコン操作技術やメンタル面での相談窓口の充実を図る必要性がある。パソコン操作で未解決の状態が継続すると,そのタスクを超えることができず,仕事が停滞してしまう。また,メンタル面では悩みなどを一人で抱え込んでしまうと,精神的に不安定となる。これらのサポート体制の充実により,安心して仕事に取り組むことができるようになるため,視覚障害者の職場定着や能力発揮につながると考えられる。 そのうえで,視覚障害者の就労を支援する際には,1)仕事を遂行するための高いパソコン力,2)職場生活を円滑に送るためのコミュニケーション力,3)前向きで挑戦する姿勢,4)不安や孤独感などの厳しい現実を乗り越えていくためのポジティブな思考が必要なことが明らかとなった。就労を希望する視覚障害者はこの点を十分に認識するとともに,支援する側はこの点を踏まえたプログラムの作成と検討が必要である。障害者に対する職業訓練2<参考文献>表9 就労希望者へのアドバイス項目前向き・挑戦の姿勢厳しさの自覚人間関係パソコン技術孤独感その他

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