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図5 ティグ溶接における指導技法例5.4 教材の作成② 指導技法の習得 訓練生は,指導員が行う提示を見ることで目標とするビードや溶融池の形状を理解することができる。しかし,訓練生が提示後に溶接を行った結果,目標は理解しているが,作業要領がわからず適切な溶接を行えていないことが多くみられた。そこで,実習の中で先輩指導員が行っていた訓練生の手を持ちながら溶接を行うという指導方法を実践した。訓練生には,溶融池を観察できるように通常の作業姿勢で構えてもらい,指導員は後ろからトーチを支え溶接を行う姿勢である。実際に行った指導技法例を図5に示す。 その結果,訓練生自らが溶接を行った感覚があったようで作業要領が理解でき,その後も適切な溶接を行えていた。このように,訓練生が理解しやすい指導技法を身に付けることが重要である。③ 悪い溶接施工方法の提示 多くの訓練生は,どのような理由で悪い溶接となるのかがわからず,同じ失敗を繰り返す傾向にある。そのために,実技の提示では良い見本の溶接を行うことに加え,失敗事例を提示する必要があると感じた。そこで,自己研鑽では自らの技量を高めるための練習に加え,多くの訓練生が失敗する方法を提示できるようにするための練習も行った。実技指導補佐を行った際には,失敗事例の提示も行った。その結果,溶接経験の浅い訓練生でも,上手く溶接できない理由を理解して自ら訓練課題の良否判断を-29-行うことができるようになっていると感じた。 これらを踏まえ,実技指導技法の習得度を確認する目的で授業担当を3回行った。なお,すべての授業は研究公開訓練に準じて行った。多くの管理職・先輩指導員の方々に授業見学をしていただき,授業終了後に行った面談では,私自身が気づかなかった多くの改善点を指摘していただいた。研究公開訓練に準じた形での授業担当を行うことで,指導の改善点を把握できたことは,指導法を考えるうえでとても有効な手段であった。 訓練生が身に付けなければならない能力は,上手く溶接を行うための技能や専門的知識だけではない。失敗した場合はどこに原因があるのか,上手く溶接を行えた場合はどこが良かったのかを考えることができる能力が重要である。 ところが,訓練生は短期間の訓練で技能や知識を身に付けなければならないため,「なぜ」の部分まで到達することは難しいと考えられた。そこで,訓練生が少しでも作業のポイントや関係する知識を理解しやすいように教材を作成することとした。図6に作成した教材の一例を示す。 この資料は,実習で行う各課題に対する溶接のポイントを記しており,そのポイントに対して「なぜ」を多く追究する形式で記述している。また,課題の仕上がり形状の見本を作製し資料に記載することで,課題の目標が明確となるように工夫した。この資料の仕様は,以前からポリテクセンター八幡で使用されているものであるが,文章や各課題の仕上がり形状画像は,すべて自作のものに変更した。資料を作成するうえで,自ら練習を積むことによって各課題の成功・失敗のポイント,そして理由を理解しなければならない。そこで,筆者は先輩指導員の指導のもと,このような技能・知識を身に付けるために実習補佐,自己研鑽を行った。 ポリテクセンター八幡での1年間のOJTに関して訓練科,訓練コースの運営における取り組み46.おわりに

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