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1.はじめに2.専攻科(応用短期課程)について 本県内の製造業は,長引く景気低迷に加え,生産拠点の海外シフトなどにより疲弊している状況にあったなかで,平成23年3月11日に東日本を直撃したマグニチュード9.0の大地震とそれに伴う巨大津波によって,多くの尊い命と財産が奪われた。 「人命が失われるような津波被害は今回で終わりにする」という決意のもと,災害の苦しみ,悲しみを乗り越え,「安全に,暮らし,働くことができる地域社会」を取り戻すため,科学的,技術的な知見に立脚し,沿岸地域をはじめとした岩手県全体が,東日本大震災津波を乗り越えて,力強く復興するための地域の未来の設計図としての復興計画を策定(H23.8)し,少しずつではあるが確実に前に進んでいる状況にある。 県内産業界においては,自動車・半導体産業集積を機とした製造業の復興が期待されるなか,その担い手となる産業人材の育成が求められている。特にも少子高齢化による担い手の絶対的な不足や,団塊世代の大量退職による技術・技能継承の危機,さらに継続的に雇用されうるエンプロイアビリティの向上などが課題としてあげられる。ここに追い打ちを掛けるかのように沿岸部の産業復興においては,震災後の沿岸部からの若年者人口の県外流出が深刻な課題となっている。 本県では震災以前から,産業界,教育界,行政それぞれが共通の目標を持って連携しあいながら,若年人材を含め,技術・技能者などの産業人材の育成についての積極的な取り組みに期待が持たれ,平成19年4月当校(平成9年4月開校)に「産業技術専攻科 生産システム技術コース(以下,専攻科)」を新たに開設し,産業人材育成の新しい取り組みを進めてきた。 本県の復興計画の中には,復興に向けての目指す姿や原則,まちづくりのグランドデザイン,具体的な取り組みなどが盛り込まれているが,このうち本校の使命である「産業人材の育成」が,産業振興分野の要として位置づけられ,新たな産業分野にも対応できる地域を牽引する「リーダー的な産業人材の育成」に期待がされている。 本稿では専攻科における企業に対しての人材育成支援と,その延長として震災復興支援につながった取り組み事例を紹介する。 専攻科は1年制であり,定員は10名である。学生は,短大課程等からの進学生と,県内企業からの派遣生で構成されている。 カリキュラムは表1に示すように,3本の柱から構成されている。 1つ目の柱は,生産現場が実際に抱える生産工程の過程で生じる課題を企業から聴き取り,個人ごとに研究テーマとして設定し,それぞれの課題解決や課題達成に向けた生産現場における改善力,新分野開発に向けての実践力を養う「オーダーメイドカリものづくり人材の育成に向けた取り組み1岩手県立産業技術短期大学校 産業技術専攻科本間 義章-3-  ものづくり人材の育成に向けた取り組み 1モノづくりリーダーの育成を目指して〜〜産学連携による地域を牽引する技術を高め復興に貢献できる力を

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