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佐賀大学医学部井手 將文・堀川 悦夫-3- 障がい者の法定雇用率が平成25年4月より引き上げられ,規制の対象となる企業も増えている。障がい者の雇用の必要性やその認識は高まってきているが,就労を希望する障がい者や高齢者は実態としても潜在的にも相当数に上ると考えられる。 わが国の障がい者雇用制度のなかで,障がい者就労を促進するためのコーディネーターやジョブコーチのような専門職は非常に少ない。端的な例としては,わが国には就労支援コーディネーターやジョブコーチを専門に養成する高等教育機関や専攻がない。最も近い例では,障害者職業総合センターでの障害者職業カウンセラー養成は,入試倍率も高いうえ,しっかりとしたカリキュラムで教育がなされている。しかしながら業務独占の資格ではなく,一度離職すると再雇用されることはなく,履歴書に勤務経験を記載できること等に限定されてしまう。 一方,米国においては障がい者就労支援コーディネーターは,全米で100を超える大学院で養成が行われ,連邦政府からの修学支援も潤沢であるという。国家財政に占める障がい者就労支援のコストを遙かに上回るほどの税収が,障がい者の就労による納税によって行われているというコスト計算の効果もあるとはいえ,日米には大きな開きがある。 われわれは,高齢者の就労支援を支えるコーディネーターを高等教育機関で養成するためのモデルカリキュラム開発のテーマで,文科省教育改革事業を行うことができ,その経験をもとに考察を進めていくこととしたい。 佐賀大学では,就労支援教育をテーマとした「障がい者の就労支援に関する高等教育カリキュラム開発」事業を文部科学省教育改革経費を得て,平成21〜24年度の期間で実施した。本事業は,平成21年度の準備期間を経て,平成22年4月から「障がい者就労支援コーディネーター養成プログラム」として本格的にスタートした1)。本プログラムの開講科目は8科目(16単位)で,その中の4科目(8単位)が主題科目として平成22年度に開講された。平成25年度からはこの3年間の実践結果をもとに,6科目(12単位)に再構築し,新たな「障がい者就労支援コーディネーター養成プログラム」としてリスタートしている。 本稿では,当初実施した本プログラムの概要と平成22年度受講生の3年間の実践状況について報告するとともに,再構築し平成25年度からリスタートした新カリキュラムの概要について報告する。 障がい者の就労支援を推進していくためには,障がい者本人や雇用企業への支援とともに,障がい者の就労をサポートする専門的知識やスキルを持った人材の養成が必要不可欠である。しかしながら,さまざまな分野における専門的知識を持った人材を育成する場である,わが国の大学等の高等教育機関に障害者に対する職業訓練11.はじめに2.「障がい者就労支援コーディネーター 養成プログラム」実施の背景1  障害者に対する職業訓練 障がい者就労支援コーディネータ養成プログラムの実践

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