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丁寧なラッピングで椿娘に磨きをかけるき出しているようだ。「大変だけど,味噌を味わう人が喜んでくれるのが嬉しい」とBさん。味噌職人としてのプライドが見え隠れする。 Dさん(男性,知的障害)の担当は,道具洗い,掃除,収穫した大豆をさやからはずす,畑に水やりをするなど,自分のできることをこまめにしている。「何でも仲間と一緒にすることが楽しい」と笑顔で語る。 さらに,生産だけでなく,販売が重要な意味を持つことは言うまでもない。生産した味噌の販売は,同じ法人が運営する別の事業所である,かがやき事業所に託して行っている。具体的には,かがやき事業所の製品である革製品,干し野菜などと一緒に販売。さらには,法人内の給食やグループホームの献立にも活用している。また,地域住民をはじめ,口コミでも販売している。 障害のある人が作ったから買ってもらうのではなく,美味しいので売れるというのが,今日の障害者の生産活動における共通理解といえる。消費者は,初回は「障害者のために…」と協力してくれるが,リピーターとして定着するには,「障害者が作ったから」は通用しない。 その際には,「美味しいこと」,「丁寧さ」,「無添加」,「安心」,「安全」等がキーワードになる。しかも,そこには生産をするうえで,障害が障壁やマイナス要因になるのではなく,障害ゆえの特性がにじみ出ることが必要だ。 そこで,あおぞら事業所の味噌づくりをとらえなおしてみると,以下のような“特長”が見いだされる。 一般の職場であれば,作業速度が遅いことは,生産効率を上げるうえでは問題視されるが,味噌づくりにおいては,むしろ,慌てず,熟成を待つ姿勢が求められ,知的障害のある利用者にとっては,得意な工程ともいえるだろう。「待つ姿勢」が確実に,味噌の旨味を引き出す原動力になっている。-33- さらには,障害の特性のひとつに特定のもの・ことへの「こだわり」があるが,却って,そのこだわりが丁寧な,手抜きをしない作業につながることも少なくなく,味噌づくりにおいては,「丹念な仕込み」という職人技にも転じている。 こうした障害の特性を,生産活動のネガティブな要素としてとらえるのではなく,製品の質の向上につながるプラスの要素に変えていくことが,特に支援者に求められることに気づかされる。 また,生産ばかりではなく,丁寧な包装作業で商品価値をあげることも欠かせない。 こうした,作業工程の工夫が不可欠であり,その結果,どんなに重い障害の人でも,必ず担当できる仕事があることに気づかされる。 味噌だるの運搬,器の洗浄,作業場の清掃,いずれも味噌づくりには欠かせない重要な仕事。その人にあった仕事を切り出し,場合によってはその人しかできない仕事を準備する。その連帯感が味噌の味を深めていく。 さらに,食品製造だけに,衛生面への留意や安全の確保も不可欠であり,その基本姿勢の獲得に障害の有無は無関係だ。 衛生管理を徹底させるために,障害のある人がわかりやすいよう手順を絵で示すなどの工夫を凝らしている。障害者に対する職業訓練54.障害の特性を生かして

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