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味噌づくりのプロによる指導風景 この中で,味噌づくりは,4年の歴史を持っている。そのきっかけは,花椿で何か皆さんに喜んでいただける物を作ることができないだろうか? という話があり,他県の福祉施設へ職員が見学へ出向いたことから始まる。その後,数回出向き,実際に宿泊しながら味噌づくりの方法,手順を学び,新たに味噌づくり用の工房を作ることになった。 ところで,美味しい味噌づくりには,有能な指導者が不可欠である。あおぞら事業所では,その役割を支援職員が担っている。味噌づくりは味噌づくり職人を招聘し,その技術を習得した。 支援職員のAさんは「初めは,なぜ味噌なのか…という思いもあり,もちろん,味噌づくりの経験もないので戸惑った。他県の味噌づくりを生産しているところとは規模が違いすぎた。できるのだろうかと不安が募った。しかし,実際に始めてみると実に創造的で,知的障害のある利用者にも担える作業が多いことに気づかされました」と述懐する。 あおぞら事業所が生産する味噌は「椿娘」。原材料の豆は大豆と黒豆。両方とも原材料から栽培している。すなわち,原材料はオール国産だ。南砺市産の米と施設で作った大豆・黒豆を使用して可能な限り,地産地消にこだわり,地元に根付いた施設として南砺市のPRを目指し,地域にも貢献していきたいと職員・利用者は意気込む。 年間の総生産量は約200kg程度。その工程は,下表に示すとおりである。ど発酵する。③出来上がった麹に大豆,塩を入れる。醸造期間は,約6ヵ月である。ポイントは,麹をつけてからの温度管理。大豆が11月,黒豆が12月に収穫できるため,また≪味噌づくりの工程≫①酒米を蒸す。そこに麹菌を混ぜる。(種麹)②麹菌が酒米につけるように約40℃で二日間ほ技能と技術 3/2013-32-お米は10月に収穫する等,収穫時期に関連して仕込みを1〜2月に行うことで美味しい味噌ができる。 一般に販売されている味噌との違いは,本当の「無添加」であること。そして,時間をかけた丁寧な醸造が独特の味わいを深めていく。 ところで,利用者の仕事は幅広く,畑の水やりから道具洗い,掃除,大豆の収穫時に全員で大豆をさやから出す,味噌を混ぜるなどである。作業時間内になるべく終えるように職員が段取りして支援をしている。量を計ることはできないので利用者にまず,袋に味噌を入れてもらい,職員がそれを計って袋詰めをしている。販売は,各種イベントや,グループホームでの食材として納品。 味噌づくり職人のBさん(男性,知的障害)に尋ねると「豚汁」として自分たちで作った味噌を味わったという。味噌づくりにおけるBさんの担当は,出来上がった味噌を入れた1kgの袋を密封すること。地味ではあるが,味噌を多くの人に味わってもらうためには重要な役割。Bさんは,この仕事を1人で任されている。味噌づくりの仕事について,Bさんは「作っていて楽しい,やりがいがある。味噌も美味しい」と自信たっぷりに答える。 Cさん(女性,知的障害)の担当は,蒸した酒米を40度まで冷ますために,ダマになっている熱い酒米を揉みほぐすこと。味噌づくりをする際の苦労を尋ねると「揉みほぐすときに,どうしても,手が熱くなること」とはにかむ。その苦労も味噌の味を引3.味噌づくりの“ミソ”

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