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社会福祉法人渓明会障害者支援施設花椿あおぞらサービス管理責任者山下 千浪 障害者雇用が進むなか,重度の機能障害ゆえに支援があってもなかなか通常の雇用には結び付かない人がいる。重い知的障害のある人たちの中には,障害者の福祉施設においてさまざまな生産活動に取り組んでいる人も少なくない。 障害のある人の工賃は全国平均で月額1万3千円くらいと一般の雇用労働に比べると,かなりの低額だが,それでも働くことは,社会参加や自己効力感を実感するうえで重要である。 障害のある人は,多様な生産的活動や役務(サービス)に従事しているが,特に,食品加工等は,消費する人たちの顔が直接見え,日々の生活に欠かせないものゆえに,障害者の作業活動においては,重要な位置を占める。 特に,どの家庭でも基本的な食材・調味料として≪施設の概要≫社会福祉法人渓明会 障害者支援施設花椿あおぞら所在地:〒939-1874    富山県南砺市蛇喰1302事業内容:生活介護事業(定員40名)・     施設入所支援事業(定員30名)等生産的な活動:食品加工 味噌,漬物,菜園なお,同施設内に位置づけられる障害者支援施設花椿きらめきと一体的に運営。-31-用いられる味噌づくりに取り組む施設と障害のある人たちの仕事ぶりを紹介したい。 私の所属する社会福祉法人渓明会障害者支援施設花椿は,富山県南砺市にある。主に知的障害のある利用者の支援施設である。日中の事業として,障害者総合支援法に基づく,生活介護事業,施設入所支援事業,短期入所事業,日中一時支援事業を提供している。 生活介護は,介護を必要する障害者に日常生活上の介護を提供する事業だが,その1つとして生産的な活動を取り入れている。 就職は難しくても,何らかの生産的な活動を担うことは,働くことの意識化や,物を作ることの楽しさや意義を具体的に実感できるからである。 生産活動の結果としての商品は販売することができ,売上から原材料費等を差し引いた収益は,その作業にかかわった利用者で分配できることになっており,これを工賃と称している。障害者支援施設花椿あおぞらでは,収益額はさほど多くないため,販売の成果は,個々の利用者に直接現金で還元はしていない。しかしながら,例えば,外出や食事会等を充実させることで,利用者の施設における生活を豊かにするといった間接的な支援に結びつけたいという思いがある。 具体的に取り組んでいる生産的な活動は,味噌づくり,漬物,菜園である。障害者に対する職業訓練51.はじめに2.事業所と味噌づくり  障害者に対する職業訓練 5味噌づくりの“ミソ”−知的障害のある味噌職人−

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