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着(相互)関係の特性にも関与し,そこから二次的に形成された社会化困難という観点から,本人の「生きにくさ」の内容を各ライフステージを通して,個別的にとらえていく必要がある。青年・成人期における就労支援においても,家庭や地域生活で安心・安定して生活できるよう生活支援を切ることはできない。本人や家族が自らの生活を主体的・自発的に営むためにも,「困っていること」や「生きにくさ」を共有できること,人とかかわり合う支援が必要である。そのためには,支援の基盤となる「その人にかかわることができる」「話ができる」人との相談関係,信頼関係の構築は欠かすことはできない。 発達障害がある人は,「コミュニケーションが苦手」という障害特性があるととらえられているが,トスカ相談から本人たちの話をきいていると,その障害特性だけでとらえてよいものかと思うことがある。幼少期から「何を言っているのかわからない」「言っていることが変だ」と人から言われ,誤解されたり,注意や叱責を受け続けてきたことから,さらに話ができなくなる,どうして良いのかわからないまま,なるべく人と話をしないようにしてきた,できないことやわからないことを人に伝えられずに困惑し不安を強め,孤立した生活を送ってきた人たちが多いことに気づく。今青年・成人期にある人が,これまでどんな体験をしてきたのかを,知ることや想像することもまた大事なことだと感じている。 また多くの人たちが「言わなくてもわかるであろう」とされること,障害のない人たちが作ってきた社会において“自然に育っていくもの”とされることが,「発達障害がある人」にとっては「わからない」「できないこと」が,その人の「生きにくさ」に関係している。それは,この発達障害(特に自閉症スペクトラム障害)が,「想像の障害」と言われることからも,これまで成育歴の体験の中で,必要な経験の積み重ねが少なかった人が多いことがわかってきた。なるべく早期から,丁寧に人間関係のやりとりを重ねていくこと,そこで安心・安定できる人との関係を構築していくことが望まれる。愛着・信頼関係を基盤として,自己認知や環境認知,自己統制技能と技術 3/2013-16-へと発達していくものと,私たちは改めて認識しなければならない。年齢的なこと,就労を見据えた社会参加を促すために,すぐに自己統制をすすめたくなることが往々にしてあるからである。支援のミスマッチはそこで起こっていることが多い。 私たちが発達障害のある人とのかかわりから,この人たちの特性を述べると,○人に気を遣い,緊張することが多い。そのため心身ともに疲れやすい。○不安が強い。他人は想像もしないところに不安や脅威を感じやすく,容易に解消できない(今までの経験から,失敗すること,できないことへの過度の不安がある。安心していられるまでに時間がかかる)。○わかることや納得できることには,誠実に真摯に取り組むことができる。○本人が安心,安定できると,振る舞いや人へのかかわり方が変わってくる(認識の中に人や周囲の状況が入ってくる,見えてくる。本来もっている能力が発揮できる,できることが増える)。 人にかかわることから,互いを知ることが増え,共有することで支援のあり方,方向性が見えてくる。 今まで述べてきたことをまとめると,まず支援者の立ち位置をどこにおくかが大切なことだと気づく。障害があることから生じる「生きにくさ」を抱えながら,生活するなかで社会が「障壁」になっている。本人の側に立って社会を見たときに,「何が障壁になっているのかを知る」こと,「その障壁を減らすことが『生きにくさ』の軽減につながる」こと,それが「支援」になると考える。 生活・就労における支援について,感じたこと,わかってほしいことについて,トスカ相談から当事者の声を以下にあげる。○「〜ができないから就労支援はできない」と支援5.発達障害者支援について 〜本人の立場から支援を考える〜

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