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2.問題意識と課題1.はじめに山口職業訓練支援センター蒔田  昇-6- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下「機構」という)の職業訓練の魅力の1つに,きめ細かな就職支援による高い就職率があげられている。高い就職率を維持するための取り組みの1つに「ジョブ・カードを活用した就職支援」があり,職業訓練指導員自身が離職者訓練受講者(以下「受講者)という)に対してジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングを行うことで,訓練指導との相乗効果で就職に関するコミュニケーション機会の増加や相互信頼関係の構築等により,就職促進に多大な効果を発揮している。 元来,機構の職業訓練指導員には「離職者および学卒者へのきめ細かな就職支援力」が求められており,指導員の就職支援力の向上は育成課題である。 筆者は,佐世保職業能力開発促進センターにおいてこの取り組みを推進し,2008年6月〜2010年10月までの間,リーマンショック後の急激な雇用悪化で地域の有効求人倍率が過去最悪を記録するなかで,就職率は増加するという成果を上げた。この取り組み成果を『職業訓練受講者に対するキャリア・コンサルティングの実践 〜ジョブ・カードキャリア・コンサルティングの組織的展開を通じた,求職者の就職率向上の取り組み〜』と題したレポートにまとめ「キャリコン大賞」(特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会が主催)に応募し,一定の評価を得たので,今回は,その取り組みを紹技能と技術 2/2013介する。 (施設の最優先課題は,受講者の就職) 公共職業訓練施設に与えられている最優先課題は,目標就職率の達成である。受講者は,就職を目指して新たな知識,技能の習得に励んでいるが,地域の厳しい雇用・失業状況下では,本人の希望に沿うような求人が少ないのが現状である。しかし就職については,受講者個人の希望が優先され,労働市場の求人とのマッチングは大変困難な課題であり,ここにキャリア・コンサルティングが必要とされる場面が生じているのである。 就職率の目標を達成するためには,専門家の支援に加え,指導員が受講者1人ひとりに対して,さらに親身になってきめ細かい就職支援を行う体制を構築していく必要があった。 (担当指導員の相談支援スキルの差) 受講者に対するキャリア形成支援,就職支援は,これまで能力開発支援アドバイザーと就職相談員が組織的・計画的な支援を行いながら,精力的に個別の相談援助を行ってきた。 主に専門分野の職業訓練で学科や実技指導を行っている指導員も,当然受講者が早期再就職できるように,さまざまな就職活動支援を行っているが,その支援スタイルや支援スキルは指導員によってバラツキがあった。 したがって,6ヵ月間の訓練指導を通じて生まれ2  魅力ある職業訓練について ジョブ・カードを活用した就職支援の取り組み

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