1/2013
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———グループの運営———(課題実習のかなめ) グループ運営を続けるには「情報の共有」と「技術の伝達」が必須です。これらは世の中においてすでに継続されてきていて,良い面が強調されていますが良くない面も出てきています。「情報の共有」の媒体には,見えるものとしての「報告書」や「マニュアル」と,グループになんとなく存在するが見えない「気」や「暗黙知」があります。技術の確立の過程では,やったことを「報告書」としてまとめています。技術が確立されはじめると「こうしたらよい」ということを,「マニュアル」としてまとめるようになります。「マニュアル」ができると,こんなおいしい情報はないので,以後メンバーはマニュアルに書いてあることをきちんと行うようになります。ここまでは「マニュアル」の非常に良い面ですが,「マニュアル」を重宝しているうちに「マニュアル」以外のことをやってはいけないと思うようになります。こうなると,例えば生産現場において,条件が変わりメンバーの想定しなかったことが起きると,だれも対処できないことになります。これが「マニュアル」至上主義のよくない面となります。最近日本で起こっている失敗,事故,トラブルはこの「マニュアル至上主義」のよくない面の表れだと思います。しかしながら「マニュアル」をまとめるのが良くないということではありません。「マニュアル」を作って,守り,使わなければ無駄が多く,非効率です。まず,「マニュアル」どおりの仕事をして,そのうえで,この「マニュアル」どおりでよいのか,何か問題が隠れていないかと自問し,必要ならばグループとして,「マニュアル」に変更を加えなくてはいけないのです。グループ運営には「マニュアル」の適切な運用が求められます。 明文化されていませんが,グループではみんなが知っていて当り前のことがあります。グループの文化なり,伝統なりを構成している空気のようなもので「気」といいます,また共有技術は暗黙知といいますが,まとめて「気」としている場合もあります。グループメンバーは,そういう「気」に包まれ,「気」-3-による影響を受けています。しかしながら,グローバル社会においては,全く異質な文化とのお付き合いも出てくるので,お互いの「気」特に暗黙知に関しては,お付き合いの前に相互確認が必要です,お付き合いの中でも自分にとっては常識でも相手には伝わらないこともあることを理解し,積極的に伝える行為を起こす必要があります。 今、どの組織,企業においても団塊の世代の人たちが大挙して会社を去るために,技術の空白ができるのではないかと心配されています。技術の取りまとめに携わった人たち側から見ると,取りまとめた技術の温存や伝承が必要不可欠だと思っているようです。イメージ的には技術のバトンを持って走っている先輩が後輩にそのバトンを手渡したいと思っていると想像してみてください。中継地点でただ待っている後輩に手渡したとしてもバトンという知識だけしか伝わりません。技術のバトンを持って今までやってきたことを次にどうしてほしいかは,中継ゾーンをいっぱいに使って共に走りながらの受け渡しが必要です。技術がほしいと思っている後輩がいて,生き生き働いている先輩を見て,自分もああなりたいと思い,先輩から知識や経験をむしり取り,それを自分の知恵として成長していくのでなければ技術は伝わりません。「技術の伝承」「技術の温存」などもてる側の押し付けでは間違いなく伝わりません。技術を伝えたい人が,その技術をほしい人に相互に確認しあう過程が必要です。前年度の課題実習で先輩たちが残してくれた報告書を見る場合,疑問点があれば遠慮なく聞きにいき,先輩たちも快く議論に加わってほしいと思います。 あとハウツウになりますが,実際にグループを運営して仕事に取り組むときには,グループメンバーお互いの仕事状況をメンバー全体で把握するため「報連相」の具体的まとめ手段が必要となります。このまとめ手段はオープンスペースにおかれ,一目でわかる一覧が最もよいと思います。日程管理パソコンデータなどのデータベースでは見たいところを探す操作が必要なので,全体を把握しにくく使いにくいものとなります。この人のことば

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