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4.障害者は,負担?3.ユニバーサル農園・心耕部という考え方お金を稼ぐために働くと,思い込んでいた私には衝撃的な一言でした。「働く」とはどんなことなのか,本当の意味を彼らから学びました。与えられた命を世の中で生かすこと,役割を果たすことが彼らの「働く」意味だったのです。お金は,そのあとから付いてくるものでした。 しかし,近年障害者の働きの場が少なくなっているのが実情です。彼らは,働きの場を農業分野に期待をしています。確かに健常者に比べたら作業能力は低いかもしれませんが,働く意欲という点では,彼らの意識はとても高く実直です。 最初は,ボランティアの気持ちで一週間の研修を条件に大きな不安を持ちながら受入れを承諾しました。しかし,実際,作業場に障害者が入ると予想もしていなかったことが起こったのです。全体の作業効率が上がったのです。障害者の作業能力は健常者の半分,3分の1と言ってもいいかもしれません。そんな彼が一所懸命働くことで周りのパートさんたちが彼を助けようと力を貸してくれるようになり作業に工夫がうまれ協力体制が生まれたのです。作業場は,とても思いやりのある温かな空間となります。そして,総合力として作業が効率的に進むようになったのです。ボランティアの気持ちは吹き飛び,障害者と健常者が共に働く効果は経営として成り立つと確信し障害者をビジネスパートナーとして一年に1人ずつ採用していこうと決めました。そして,障害者が農園で働ける仕組みを作り上げればお互いにとってメリットとなると感じたのです。 京丸園では,「障害者との出逢いをきっかけに農業に魅力を感じているさまざまな人たちが参画できる仕組みを創ること,またそれにより今までにない新たな農業の形を提案していける農園」を“ユニバーサル農園”と定義し2000年から取り組みを始めました。まずは,農園内に心耕部を設けました。コンセプトは「働く個人ごとに役割を持て,人との繋がりの中で,幸せを感じられる仕事づくりを目指す」。企業活動はすべて,人の幸せのためにありま技能と技術 4/2012-4-す。正直に働き,品質の良い農産物を作り,お客様から仕事の評価を頂けること,そして結果として,利益とやりがいを生み出せることが,真の社会参加となります。京丸園での働きが,かかわる人々すべての人たちの「喜びと安心と誇り」となれるような運営努力をしていきます。私たちの目指すユニバーサル農園とは,福祉のための農園ではなく,「農業経営における幸せの追求」です。障害者は,心耕部に所属し京丸園の一員として働きます。心耕部に所属すると「どんな働き方がしたいですか?」という質問からスタートします。農業現場は,多くの仕事を生み出すことが可能な職業ですから障害者の目的,希望を叶えられる農作業プログラムを作成し提案することができるのです。(2009年日本産業カウンセラー学会発表) 障害者雇用を始めて13年が経過しました。農業界での障害者雇用はこれから必要であるとスタート時からご指導頂いてきたオリジンコーポレーション杉井保之氏より学会発表のお話を頂きました。企業にとって障害者の雇用の取り組みは直接,利益につながるものではないという認識どころか,多くの企業では負担なことと考えられているのが現状です。しかし,障害者雇用は本当に企業にとって利益をもたらさない負担なことなのか? を農園の事例をもとにまとめていただきました。障害者雇用に踏み切って以来,障害者の雇用数と売上は比例的に増し2009心耕部を軸とした京丸園組織

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