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2.企業の価値観も踏まえた応募書類づくり3.思い込みによる思考停止からの脱却自分の価値観のみがよりどころとなっている状態志望動機自分の価値観位置の移動企業の価値観自分の価値観自分の価値観と企業の価値観に配慮した状態志望動機企業の価値観 学生はまず,就職活動で自己分析をし,整理したものを応募書類(エントリーシート・履歴書)にまとめる。 はじめに見る応募書類の多くは,自分が得意なことや好きなこと興味があることを自分の価値観により,思うままに応募書類に記述している。アルバイトの採用試験ではそれでもよいかもしれない。しかし,正社員としての採用を考えている採側はこれでは満足しない。入社後,「思っていたものと違う」という退職を避けたいからである。 採用側は何をやりたいのか,将来のものづくりをどうしていきたいのか等,ビジョン(ここでは「キャリアビジョン」という)までも期待している。単に今までこれが好きだったのでこの分野に関する仕事をやりたい,という説明には満足をしない。目的意識が高く,目標を持って前向きに仕事をする人の入社を期待しているからである。 もちろん,一定水準の技術や技能を持つことを説明することは必要なことであるが,就職の場面では,「なぜ,当社を志望するのか」を近い将来像とともに問いたいのである。 内定が得られない学生の応募書類を確認すると,およそこれらの項目の言及がなかったり,あっても,偏りのある説明や説明そのものが不十分な記述となっている。企業の問いに対する回答を応募書類に用意していない場合,面接で確認された際にいきあたりばったりの説明をするか,想定外の質問として回答ができないことになる。専門的な能力について優秀な成績を収めていても,準備不足で本来得られるべき評価を得られないという結果になる。 さらに最終面接まで進むものの,最終面接が通過できない学生は,企業に対する問いに対する答えを準備しているが,自分だけの価値観に立脚した主張をしている場合が見受けられる。自分の価値観のみに立脚した志望動機は経営レベルの面接官には通用しないのである。学生が自分の好きなことを雄弁に語っても,応募先企業との相性(企業が求める人材技能と技術 4/2012-20-像に合致している可能性)やキャリアビジョンについて企業の価値観や方向性とズレが認められる場合,不採用の判定となる。 日本の新卒者採用の市場では,将来の成長を期待するいわゆる「ポテンシャル採用」が主流となっており,面接が進むにつれ,企業の相性・キャリアビジョン・発揮可能な能力が問われるのである。 自分はこういう人物だという思い込みや強いこだわりがあると,応募先が変わっても同じプレゼンテーションを行うことになる。 業種・職種が違っていても同じプレゼンテーションを行っているケースも見受けられる。 必ず変えるべきということではないが,応募先の情報を踏まえているかが重要であり,自分というアイデンティティがこうだから,これしかないということでは,質問に応じたやりとりが成立せず,面接の場で困ることになる。 専門性の高い科目を実験や実習などを中心に据えて教育訓練を行っていることは,技術者を採用したいと考えている企業にとっても大きな魅力となっているようだ。職業大小平キャンパスで受理するほとんどの求人企業は「充実した専門科目」「豊富な実験・実習」などを求人をする理由にあげる。ただし,採用選考についての説明では「人物重視」の選考をすることを必ずといってよいほど付け加える。「やりたいことがあるか」「現場の仲間とうまくやれる3.1 採用企業の考え方図2 主張の立ち位置の移動

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