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1.はじめに2.日本の近代化と靴製品などの歩み写真1 世界最古の革靴 日本製品や“ものづくり”の技術が世界で高く評価されていることは,多くの国々の人々が認めるところである。 “ものづくり”は,さまざまな原材料,素材を利用して人間生活や産業活動に役立つ製品を作り出していく。そこには技術者・技能者や,匠の技が生かされている。 “ものづくり”に利用される素材は非常に多く,古くから利用されている原材料としては,木材や鉄,銅,銀,金,革,紙など数多く,それらは現代においても重要な基礎原材料となっている。科学技術の進歩とともに,アルミや各種合金,カーボンファイバーなど,さらに多岐にわる新素材が利用されている。 「ものをつくる」という作業を通じて,すばらしい機能・性能・価値を持った完成品(製品等)を作り上げるということは,それがどのような素材であっても,作る人間(技術者・技能者など)のスキルと感性および業を起こした起業人魂によるところが大きい。 本稿はその素材の1つとして,古くから利用されてきた皮革・(靴)に焦点をあて,この分野における日本のものづくりの流れや,活動の足跡を洗い出し,皮革産業とそれを支えたものづくりにかかわった人たちの努力を明らかにした。 革を素材としたものづくり分野は,新素材,情報機器,環境関連,ITなどを含む先端産業分野とはかけ離れており,いささか地味な存在に見られているが,古い歴史と伝統ある産業として重要であり,日本の近代化の役割の1つをも担った領域といえる。 皮革を人間が利用し始めたのは古く,先史時代から始まる。 寒さや風雨などから身を守るために人類は動物の皮を利用してきた。人間のみが他の動物の皮を利用して,生活を維持している唯一の生き物であると言われている。最近,アルメニアでは世界最古の革靴(紀元前3500年)が発見されている(写真1)。 日本の多くの技術や産業,文化は国外からの影響研究ノートNPO法人 日本エンプロイアビリティ支援機構村上 武史㈳新技術協会清水  博-33-靴づくりにかかわった人々のものづくりへの思い

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