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3.おわりにして自らを高めないと君達の将来はない”という事実を理解させなくてはならない。「安住こそが最大の敵」である。[訓練時間] 我が校の訓練時間が5,616時間に対し,国立大学工学部では3,000時間というのは短絡的にすぎる比較である。国立大学では選択性の単位が多く,自分で申請して講義を受ければ,講義時間は大変長くなるし,後に述べるが国立大学の学生が卒業研究に費やす時間は表に出ないからである。 実質的なカリキュラム上での違いは実技・実習時間として現れる。我が校では3,636時間に対して,表にある国立大学では学生実験として使われる時間は1,530時間と少ないが,東京工業大学におけるこの1,530時間の算定根拠は良くわからない。自分自身で算定したところ,地方大学ではカリキュラム上では300から500時間程度であり,卒論研究のシラバス上の時間は500から800時間の間である。すなわち,単純に足すと,800からせいぜい1,200時間程度が国立大学工学部における実習時間となる。 実際に体験すると,国立大学では座学による講義がほとんどである(自由選択で受講する講義はほとんどが座学であるために,カリキュラム上よりも遥かに座学の比率が高い)のに対して,我が校では実技・実習の時間が非常に高いことが実感される。 単純に時間で考えるときの問題は,国立大学(工学系)における卒業研究の時間が,カリキュラム上では考えられない時間を費やしていることである。通常でも一日10時間以上は実験に携わっており,学会発表等が近づくと土曜,日曜関係なくなるし,夏目的技能・技術の体得方法職業訓練を基礎とし,その応用から課題解決の能力を養成する企業での活躍の場製品開発を含む製造現場課題社会情勢の変化に伴い,技術・知識を新たにして,変化に柔軟に対応できる能力を養うことキャリア・ルート技能者→現場のリーダー→工場長技能と技術 3/2012我が校休みもお盆に4~5日休むだけという学生がたくさんいる。実質的な時間は掴み難いが,2,000~3,000時間は費やしているだろうし,それより多い学生もいる。 すなわち,実験に消費する時間は我が校も国立大学も余り変わらないという結論になる。 すでに,何度も述べてきたように,消費する時間ではなく,その内容が問題である。我が校で費やす時間は,表に示したとおりの実技を重んずる内容であるが,国立大学では,学術論文のみを目標とし,最先端の国際レベルを判断基準としている。すなわち,国立大学が目指すのは,総研究者養成でほとんどの企業が一般に求める技能,技術者ではない。国立大学が抱えるジレンマは解消が困難な難題である。 以上に述べてきたように,我が校の存在意義は非常に高いが,その認識が現状の社会情勢とずれ始めているように思われる。文部科学省は「真に役だつ技能者の養成」を目的とし,工学系単科大学を設立し,高専を展開し,長岡,豊橋の技科大学を設置した。いずれも社会が要望する技能者を排出せず,ごく一部に役だつ研究者の養成を行ってきた。次に計画するのは専門学校のテコ入れであり,我が校を含む職業能力開発大学校の併呑であろう。 われわれは,自らの置かれた立ち位置を確認し,社会に望まれる大学校を忘れてはならない。 個人的に我が校と国立大学との違いを書くなら,下記の表となる。技能の習得(現実:知識・理論の習得)講義を基礎とし,実験において講義で習得した知識の体得を図る。研究開発もしくは製造現場技能・技術の体得をどのようにして行うか。・研究者→プロジェクト・リーダー→研究所長・技能者→現場のリーダー→工場長-26-大学

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