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より実際的な分類正規・非正規境界線の正規側働」,「有期派遣労働」という類型ができますし,所定労働時間と派遣労働とからは「フルタイムの派遣労働」と「パートタイムの派遣労働」という類型がつくられます。3つの要素すべてが非正規であれば,「有期パート就業型の派遣労働」となります。 こうして3要素の有無からは,論理的には8つの非正規類型が出てきますが,実際的な類型としては,3要素に順序をつけて,直接雇用か間接雇用かが最も基礎的な分類軸,次いでフルタイムかパートかを2番目の分類軸要素と考えて,次の3つに集約することがより適当であると思われます。 (非正規雇用類型要素)…(非正規雇用者類型)  直接雇用     フルタイム         有期 ………有期フルタイム     パートタイム ……パートタイム労働者  間接雇用 …………………派遣労働者 上述のような理論的な面から導出される分類を基礎としつつも,より実際的あるいは実務的な面も考慮した分類で考えることが便利であるとともに必要となります。すなわち,職場で使用されている呼称とのすり合わせです。職場で使用されているということには,それ相当の理由があると考えられます。もっとも職場で実際に使われている呼称は非常に多様ですので,以下は,意味内容として類似するものを含めた概念的な呼称ということになります。 1つは,「アルバイト」といわれるものです。いわゆる「学生アルバイト」が典型例です。これは,上記の類型では直接雇用の有期雇用に分類できますが,その中でも想定される就業の継続性が相対的に低い場合に使われることが多いと思われます。また,勤務時間についても,アルバイトは所定労働時間が短かったり所定勤務日が少なかったりする場合が多く,理論的な類型でいうと,「有期フルタイム」と「パートタイム労働者」との中間領域にあるといえます。 2つは「嘱託」というものがあります。これも直接雇用の有期雇用の類型ですが,逆に就業の継続性-15-が相対的に高いこととともに,正規雇用との関係性がある一方で,正規雇用とはしない何らかの理由がある場合に使われることが多いと思われます。1つの典型が,定年到達後に再雇用した従業員を嘱託としている場合です。 以上のように,直接雇用の有期雇用にはさまざまなサブ分類をすることができます。上記の「アルバイト」と「嘱託」とを除いた典型的な「有期フルタイム」は,「契約社員」と呼称されることが多いようです。 3つ目にあげたいのが,「間接雇用」のとらえ方です。派遣労働者と派遣元(派遣事業者)との雇用関係があり,一方,派遣労働者は派遣先事業所の指揮命令を受けて就業するという「派遣労働」が間接雇用の典型であるといえます。しかし,こうした場合には必ずしも当たらないけれども,企業間の業務請負契約に基づいて,他社の事業所において他社の業務の流れの中で就業する人も少なくありません。この場合も「間接雇用」に含めて考えた方がよいと思われます。これは,事業所内業務請負労働とでもいえますが,そうした業務に就いている人を活用している事業所の視点から「業務請負会社社員」と呼んだり,単に「請負労働者」と呼んだりします。 以上のことから,実際的な考慮もしたうえで,非正規雇用の基礎的な分類=雇用・就業形態として次のものを考えておけば,大抵の場合は間に合うといえます。① パートタイム労働者(以下「パート」と略す。)② アルバイト③ 契約社員④ 嘱託⑤ 派遣労働者(以下「派遣社員」という。)⑥ 業務請負会社社員 それでは,JILPT調査結果に基づきながら,それぞれの雇用・就業形態の実態を解説したいと思います。しかしその前に。少し本論を離れて重要な回り道をしておきたいと思います。 先に正規雇用のメルクマールとして「直接雇用」,調査研究報告

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