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2.2災害後に感じるストレス2.3トラウマ反応とは図1 災害後の心の状況(心配になる/イライラする/ちょっとした音にビクつく/集中できない/眠れない)、②思い出す(その出来事の夢を見る/不意に思い出す/その出来事が頭から離れない)、③気持ちがほぐれない(時々ボーッとする/よく思い出せない/話さないようにしている/その出来事に関連のある場所や人を避けようとする/楽しいことが楽しいと思えない)といったことが考えられる。中には突然の自身の変化に驚き、重篤な病気に罹患したのではないかと不安が高まる人もいる。予想外の出来事に人間は心身ともに緊張し、普段体験した事のない症状が現れることは異常な事ではなく、心身が「何とかしなければ」ともがいている状態であると言えるだろう。 災害や事件、事故の体験後は、次のような症状がみられると言われている。1)それは主に①トラウマ反応、②喪失反応、③日常生活上のストレス反応、の3点があげられる。ここで述べるストレスとは、外界からの刺激や要求に対する我々の反応を意味することとする。 「トラウマ」とは、Freud.Sが「外的な力によって受けた身体的外傷ではなく、その時に引き起こされた激しい驚愕の感情、すなわち『心的外傷』である」と述べて定義している。そしてAPA(American Psychiatric Association:アメリカ精神医学会)による『精神疾患の分類と診断の手引き(DSM-IV-TR)』の中では、PTSDの項においてトラウマとなる出来事について次の3つの点があげられている。それはa)本人が危うく死ぬ(殺される)、または重傷を負うような危機的な出来事(事件、事故、災害)を実際に体験し、目撃し、直面すること、b)または、自分や他人の身体の保全に迫る出来事を体験し、目撃し、直面すること、c)さらに、出来事を体験した本人の反応は、強い恐怖、無力感や戦慄に関するもの、である。 さて「①トラウマ反応」であるが、災害(自然災害/戦争/大きな事件・事故)そのものによるストレスであり、実際に体験し、ショックや恐怖を感じたことによるストレスを指す。「②喪失反応」とは、災害によって大切な人やもの、場所や思い出を失ったことによるストレスである。また「③日常生活上のストレス」とは、災害後の日常生活の変化、不自由な生活、将来への不安などが「継続する」ことによるストレスを意味する。 震災のような突然で危機的な出来事は通常起こり得ない異常な出来事であることから、その体験による人々の「①トラウマ反応」は、自然で正常な反応として考えられるだろう。 災害体験直後からの流れを考えてみると(図1)、年月の経過と共に、①トラウマ反応→②喪失反応→③日常生活のストレス、順番にストレスが重なると考えられる。2)全ての人がこれら3つのストレスを経験するとは限らないだろう。しかしながら東日本大震災に関して考えた場合、避難生活を行ったあるいは現在も行っている被災者は、二重の苦悩、三重の苦悩を経験し、予想以上に人々の心に負担がのしかかることは容易に想像できるだろう。さらに東日本大震災については、報道各社の取材によるストレスも存在し、被災者は「③日常生活のストレス」の中で、これまでに体験した事のない種類のストレスを体験している事が考えられる。 予測できない大きな災害を体験した際には、誰もが心の変化が生じる。その場合、PTSR(Post Traumatic Stress Reaction)からPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)へ移行するか否かが問題となる。PTSRは、特殊な状況に対する当たり前の反応を指し、誰技能と技術 1/2012−20−■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

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