4/2011
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図4 ハノイ工業大学の学生トップが変われば組織や法まで変わる状況であり、先進国の制度も単発で導入されるため、パッチワーク的制度となっており、全体の整合性がとられていない状況にある。 図3は日本の職業訓練と技能検定等との関連を概念的に示したものである。職業能力開発促進法に規定された技能照査は、その取得による技能検定受検の学科免除や受検資格の期間短縮が、学生にとって大きなメリットであるため、ベトナムにおいてもその制度構築の際には組み込むべきである。 また、当機構においては、「技能五輪全国大会」を視野に入れた「若年者ものづくり競技大会」において優秀な成績を修めているが、ベトナム等の新興国においても技能競技大会は大変な盛り上がりをみせている。ハノイ工業大学においても、本年度タイで開催されるアセアン大会を目指して、国内大会にしのぎをけずっている。近年東南アジアにおける技能のレベルも日系企業の進出等により上昇してきており、技能五輪国際大会でメダル獲得を果たす国も現われている。こういった技能競技大会への参加を通して、潜在的な技能レベルを引き出すことは、それを目指す組織力自体の向上にも役に立っている。 欧州においては、2002年に、欧州の31カ国の職業教育担当大臣が集まり「コペンハーゲン宣言」が採択されている。これはいわゆる高等教育分野における共通的枠組みを構築していこうという「ボローニャ・プロセス」と同様に、職業教育分野においても、その共通的な枠組みについて確立していくことについて、宣言が採択されたということである。 「コペンハーゲン宣言」では、次の3つについて取り組まれている。1つ目が「ユーロパス」であり、2005年から個人の資格や能力が、欧州の各国において明確にしかも簡単に理解されるようにするためのもので、履歴書や語学能力パスポート等の5種類の書類で構成されるものである。 2つ目が「欧州資格枠組」で、これは欧州各国の各資格が、それぞれどのレベルにあって、その当該資格保有者がどのような知識等を有しているかということを、国を横断しても比較を可能にするための枠組みとして構築が進められている。この枠組はEQFと呼ばれ、それぞれの学習成果を、知識・技能・能力の3つに分類し、それぞれを第1水準から第8水準まで8段階に分けた形で、資格枠組みを構築している。この枠組みは、2010年までに欧州各国の資格制度をこの資格枠組みに連結させて、2012年までに各国の資格証明書にそれぞれ適切な枠組みのレベルの証明が示されるようにするという目標で動いている。 3つ目が「欧州職業教育単位制度」で、欧州各国間で、職業教育において習得された学習成果の単位互換を可能にするための制度である。 欧州は経済圏統合の一環として、職業能力評価制度の統一も行い、労働移動の自由化を図り、欧州の威信回復を目論んでいる。 日本においても、アジアとの国境の壁が急激に低くなっており、ベトナムの日系金型製作企業で働く機械工の技能レベルは日本国内と遜色がないと思われた。ベトナムの若い優秀な技術者は、日本での研修の後、日本の熟練技能者の指導を受けて、確実にその技量を上げ安定してきている。3.日本の職業訓練制度と技能検定4.欧州型職業能力評価制度−31−海外技術協力

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