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 販売実務科は一般職業訓練校において知的障害者を対象にした職業訓練を行っている奈良県立高等技術専門校の所属科である。平成18年度9月に開校し、平成23年度で6年目に入る。初年度・次年度は電卓定数計算を基にして四則計算の足し算・引き算のトレーニングシートを作成し、計算トレーニングを行ってきた。 訓練生の多くは足し算や引き算を苦手としており、自分の指を使いながら答えを導き出す訓練生もいる。一方で、そういった訓練生も、慣れた計算方法ならば素早くこなすことができていることも事実である。 掛け算・割り算は、足し算・引き算が基になっているものの、自分の指を使い答えを導き出すことが不可能なため、苦手としている訓練生もやはり多い。九九についても同様である。 周知の通り、一般的に九九の記憶方法は、教師が生徒数名と対面で聞き合わせをする方法が多い。しかしながら、この方法では学習障害を持つ訓練生の多くは、十分に記憶できず、一般生と学力差が生じてしまうのである。 また、今までの学習環境や行動プログラムの中には「自主的に覚える」という作業は組み込まれていない。加えて、「時間内に仕上げる」という行動がプログラム化されていないため、「急ぐ」「即答する」というような、一般に言う「早く物事をしなければならない」意識が薄いのである。ただ他の訓練生と異なり、「あの子が速い・遅い」など他人のことを誹謗・中傷することが少ないのが我々指導員の救いでもある。能力や学力差があっても、相手の力を認め、みんなが仲良く訓練を続けられることが安心材料なのである。 先ほど述べたように、学習障害のある訓練生は、計算を苦手とする者が多い。就職し社会に出れば、ある程度のスピードでの九九の計算が必要とされる。訓練生らに無理なく九九を記憶させ、かつ適度なスピードで計算できるようにさせることが、計算は然ることながら、万事においての自信につながることになる。 例年、四則計算の掛け算の訓練になると、計算スピードの速い訓練生と遅い訓練生に極端に分かれる。いくつか例を挙げると、訓練生Mは2分30秒で九九9段全段終わらせることができる。こうした訓練生がいる一方で、訓練生Nは3分間で上から3段半目まで、訓練生Tは3分間で上から4段目までしか終わらせることができない。こうした能力差のある訓練生らを一度に無理なく計算トレーニングさせる方法がないかと考えたのが、当トレーニング方法である。これは、筆者が長年ラグビーのトレーニングで行ってきたサーキットトレーニング、インターバルトレーニング、ボイストレーニングを素に編み出したものである。サーキットトレーニングとは、種目の違う一連の運動を繰り返して行う鍛錬法のこと。インターバルトレーニングとは、少し休憩をとり再び行う訓練のこと。ボイストレーニングとは、言葉の発音や話す速さについてのトレーニングである。1.はじめに2.当トレーニングの目的−1−奈良県立高等技術専門校 脇 長泰障害者に対する職業能力開発について① 障害者に対する職業能力開発について①障害者に対する職業能力開発掛け算トレーニングと自己啓発

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