3/2011
13/49

写真3 仮設の講義室写真5 溶接実習場写真4 仮設の実習場写真6 自作の研修ブース写真7 クレン実習風景−11−写真8 仕上組立風景 因島技術センターでの研修は、「如何に費用を掛けずに」がテーマとなる。 まず、費用対効果の観点から箱物は建設しない。各事業者を跨いで研修期間中の借用が可能なスペースと会議室を洗い出し、これを格安で借用することで講義室や「溶接」「ガス切断」といった使用頻度の高い実習場所に充てている(写真3‐4参照)。 溶接実習場は配線や台数上の関係から唯一常設が可能な場所を借用しているが、借用は期間中のみであり、それ以外は所有している事業者や地域の事業者のClassNK※5やJIS※6の試験場として活用されている(写真5参照)。必要な機材については各事業者から持ち寄っているが、受講者数が急増しているため、溶接機は造船技能開発センターから無償リースを受けて対応している。このほか、研修に必要な定盤や冶具などは必要最低限の購入に抑え、端材から手造りをして対応している(写真6参照)。 問題となるのは、研修での使用頻度が低いうえに整備するには大きな費用負担が必要となる「クレン」「玉掛」「仕上作業」といった実習場の確保である。これには、「常に使用しないのであれば整備する必要はない」という発想の転換が必要であった。実際に操業している工場設備を研修に必要な時だけ時間を調整して借用し、人と物が移動することで研修を可能としたのである(写真7‐8参照)。 こうした発想の転換は初期投資を必要最小限に抑えることができたほか、逆に設備を持たないことで、「この施設でできる範囲」「この設備でできる範囲」といった足枷をなくし、多様な研修プランの作成に繋がっている。実施したいと考える研修によって研修をする場所を変えれば良いのであり、時期的に借用することが難しければ、施設や設備を借用できる時期に研修を実施すれば良いのである。また、各研修科目により研修の実施場所を変えることは、施設棟全体ではなく施設内の部分的な借用に収まり、運営費削減にも繋がることとなる。 これで、研修ができる環境(モノ)が整った訳だが、次に問題となるのは、指導員の確保(ヒト)である。 人にものを教えるということは並大抵のことではなく、あらゆる能力を求められる。人の模範となれる技能は当然のこと、多人数での講義をこなせる能力を求められ、何より人物的な魅力まで求められるといっても過言ではない。つまり、指導員に適任な人材を各事業者から派遣するとなった場合、必然的に第一線で働く熟練技能者が長期間現場を離れることとなる。初任者研修の研修期間は3か月間であり、中小事業者から専任の指導員を派遣し合うことは現場に大きな負担を強いることとなり、困難である。 そこで着目されたのが、大手造船事業者を既に退職していたOBの存在である。彼等はかつて世界有数の造船都市であった因島を支えた造船マンであり、人材育成の経験者、現場の職長級経験者を中心に指導員をお願いしている。平成22年度の初任者研修での指導員構成は、センター長1名、次長1名、総括指導員1名のほか実技指導員25名で構成されて若年者訓練への取り組みについて②

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る