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図表4 市内事業者と市外事業者の受講割合技能と技術 3/20113−3 ヒト・モノ・カネの有機的活用図3 因島モデルのスキーム広く受講者を受け入れている(図表4参照)。 図表4が示すように市内事業者と市外事業者の受講割合(一般受講者、安全体感研修受講者を除く)を見ると、平成11年度から平成22年度までの総受講者数1,102名に対し、市外事業者は404名と全体の36.6%となり、受講者の3分の1以上を占めることとなる。受講者を派遣する市外事業者は、北は北海道から南は長崎、大分、熊本まで幅広く分布しており、受講者の地域別構成を説明すると、平成22年度までの総数1,102名中、市内事業者(平成18年度からは尾道市全域を含む)が63.3%、北海道・東北地方が0.5%、関東・東海地方が0.5%、関西地方が0.5%、市内事業者を除く中国地方が17.5%、四国地方が14.7%、九州地方が2.9%となる。平成18年度から市外事業者の割合が一時的に低下しているのは、市町村合併により因島のほか、尾道市、御調郡御調町、御調郡向島町、豊田郡瀬戸田町の1市3町の事業者を市内事業者に含めたためである。市町村合併を考慮しなければ、その約半数は市外事業者からの派遣となり、割合は図表4に示した以上に大きくなると言える。 造船業の産業構造と県境や市境が複雑に入り組む瀬戸内海特有の地域性を鑑みれば、研修の対象者は当然に広くなるだろう。しかし、市補助金を拠出する単市の産業施策において、対象を市外、県外に至るまで広げていることは異例のことと言えるのではないだろうか。むしろ興味深いのは受講者の対象を広げることで費用負担が増すことになるにも関わらず、造船業全体の発展に寄与するものとして地域の中小事業者から異議が出ていないことである。 このチャレンジは、大きな発展へと繋がっている。 研修をオープン化し、全国から多数の受講を得たことで、業界内で「人材育成の因島モデル」「因島方式」などと広く着目されることとなり、因島モデルを全国の造船集積地に活用するため、平成16年に国土交通省、日本財団の財政支援を受けて社団法人日本中小型造船工業会内に「造船技能開発センター」が設立されたのである。 この造船技能開発センターの設立は、大きな転機であった。 因島と同様の研修センターが、今治市(愛媛県)、臼杵市・佐伯市(大分県)、横浜市(神奈川県)、長崎市(長崎県)、相生市(兵庫県)の各地に設立されたほか、造船技能開発センターから資金援助や機材貸与受けることが可能となり、新しい研修に取り組める余力と関係団体、他地域との広域的な連携体制が生まれたのである。また、造船技能開発センターが支援母体として独立行政法人海上技術安全研究所などと教材開発を行うことで、産学官に近い体を成すまでに広がったのである(図3参照)。 最後に、因島技術センターが今日まで継続して人材育成に取り組めた要因として、ヒト・モノ・カネの有機的な活用があったと考えている。これについては、各研修で少し事情が異なるが、因島技術センターで設立時から取り組んでいる初任者研修での事例を基に考察したい。−10−

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