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図1 共同で人材育成を取り組める技能分野の明確化3‐2 共同職業訓練のオープン化図2 運営組織のフロー図若年者訓練への取り組みについて②因島が選んだ解決方法は、基幹産業における人材育成を「地域全体の問題」として捉え、事業者間の垣根を越えて官民一体で取り組むことであった。 事業の合意形成では、まず、何が「協力できる分野」であり、何が「協力できない分野」なのか、また、「行政が協力できることは何か」を絞り込んだ。当然に各事業者の利益に直結する「独自技術」に関するものは協力が望めない。しかし、造船業には各事業者の生命線となる「特殊な技能」を除いても「溶接」「切断」「組立」「撓鉄」「配管」といった「現場で必ず必要になる技能」がある。これは、どの事業者にも共通した技能であり、この分野を共同で人材育成に取り組める分野と位置づけた(図1参照)。 これで、協力できる分野についての合意形成はできあがった訳だが、次にどのように利害調整を図り、円滑に運営していくかという課題が残る。 ここからは、行政の役割となる。 官民一体の取り組みとして、長期総合計画に事業構想を定め市補助金の拠出を決めたほか、各事業者の要望を取り纏めて事業モデルを固めたのである。運営方法は、共同職業訓練という性質から各事業者の意向を反映する必要があり、協議会方式を採り入れ合議制とした。協議会の事務局は行政(現在は尾道市因島総合支所しまおこし課が担当)が担うことで予算管理や第三者としての公平性を保っている。 この点では、行政が参画している意味が大きいと言えるのではないだろうか。 組織の構成は、①意思決定機関であり研修生を派遣する側でもある運営協議会、②利害調整及び運営機関である事務局、③研修の実施機関である因島技術センターに分けられる。組織運営の流れとしては、行政が担当する運営事務局が、センターを運営するための補助金の拠出、関係機関との対外折衝、各事業者間との調整、指導員の人事労務管理を行うほか、研修事業の企画・調整と研修を実施するための予算の作成・執行を行なう。それを踏まえて決定機関である運営協議会が合議の上で研修内容を決定し、研修生を派遣する。運営協議会の決定に従って研修の実施機関であるセンターが研修を行い、事務局が研修の管理運営を担当する。研修の過程で改善点があればセンターはそれを事務局に提案し、改善の有無を運営協議会に諮る。最後に、運営協議会が研修評価や予算執行の監査を行うこととなる(図2参照)。 このように「地域一体型」「行政支援」と一口に言っても、利益を損ねない分野を明確に線引きし、「決定」「運営」「実施」とそれぞれの役割を分けたことが、一定の成果を得る大きな要因であったと考えている。また、行政主導ではなく民間からの自発的な提案事業であったことも強い参画意識と寄与を生む大きな原動力になった一つと考えている。 次に、因島技術センターが大きく発展した要因は、共同職業訓練のオープン化にあったと考える。 因島技術センターでは産業構造の裾野が広い造船業の特徴を考慮して、設立時より会員事業者のみならず、近隣の瀬戸内海地域を中心に全国各地から幅−9−

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