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図表3 受講者数の推移(安全体感研修除く)技能と技術 3/20113‐1 官民一体となった事業の形成体感研修除く)の受講者数は平成15年度までの40名程度から平成22年度には300名近い規模にまでに拡大している(図表3参照)。 研修の運営費は主に会費、受講料収入、補助金、負担金で賄っており、年度により変動はあるが、繰越金を除く平成22年度の実績は約4,100万円となっている。内訳は、会費が35万円、受講料収入が約2,540万円、尾道市補助金が620万円、因島商工会議所補助金が30万円、認定職業訓練補助金が約425万円、造船技能開発センターからの研修負担金(日本財団助成金)が約380万円、雑収入が約70万円である。 受講料は受益者負担が原則であるが、研修生を派遣する中小事業者の企業体力を考えると高額な設定は難しく、幅広い受講を求めると必然的に受講料を低く抑える必要がある。そのため、不足分は補助金や負担金で賄いつつ、中小事業者が負担可能な限度を考慮し、研修期間が3か月間の初任者研修は基本テキスト代込みで189,000円、各専門技能研修は内容により52,500円〜157,500円としている。技術系や安全系の科目は資材費等が掛からないため、テキスト代込みで2,000円〜3,150円と格段に安く設定している。また、平成13年度には認定職業訓練校として認定を受けるなど、研修生を派遣する中小事業者が実践型人材養成システムやキャリア形成促進助成金等の制度を活用でき、積極的かつ、継続的な受講ができる環境を整えている。 周知のとおり、認定職業訓練校は各事業者が単独で実施しているものから、業種団体等が職業訓練法人を設立して実施しているものまで様々である。 因島技術センターの人材育成モデルの特徴を端的に言えば、「独自の職業訓練施設を持てない中小事業者でも持続的かつ、効率的な人材育成が行える事業モデル」にある。因島技術センターが今日に至るまで継続して地域の人材育成に取り組むことができ、内外から一定の評価を得るに至った要因には、次の3つの要因があったと考えている。① 成功には:官民一体となった事業の形成② 発展には:共同職業訓練のオープン化③ 継続には:ヒト・モノ・カネの有機的活用 以降は、これらの要因を中心に因島技術センターの人材育成モデルについて考察していきたい。 まず、この人材育成モデルが一定の成果を得ることができた最大の要因は、各事業者間と行政とで事業の目的と合意が明確に図れたことが挙げられる。 当時、因島地域では次の問題を抱えていた。① 日立因島が撤退した後は従業員300人以下の中小事業者が主となっており、継続的な人材育成を独自に行える余裕がない。② 造船不況時に採用を極端に控えていた事業者が多く、熟練技能者と若手を繋ぐ中堅技能者が極端に少ない。③ 高度な技能を有する熟練技能者の退職により、技能水準の低下を招いている。④ 協力事業者への依存が拡大しており、今後の技能水準の維持向上に大きな不安がある。 これらの問題を解決するには、何が必要であり、何をすべきであるのか。3.因島技術センターの人材育成モデル−8−

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