2/2011
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軸軸図3 焼きばめの原理−3−てはひとつの作業がどういう作業なのかを分析することから始める。以下の手順で作業分析表にまとめていく。①全体像(どのようになれば良いか、作業の意味、目的等)②作業環境(道具、材料、設備、能力要件等)③工程分析(適切な大きさを考えてのステップ分け)④各ステップのポイント(カン・コツを表わす)⑤作業の本質(本質は何か、統括的にまとめる)⑥判断基準(どうなれば良いのか評価を示す) このように言えば作業標準書と同じではということになるが、各ステップの動作を伴うところでカン・コツ部分を抽出するものであり、そこをいかに表現するかが従来の作業標準書と根本的に異なるのである。その際ベテランの何気ない動作の中に潜んでいるものをどのように表現するかがポイントである。図2の2−③シートではナイフは20°の角度で入れて、りんごを回す速さは1秒間に2cmの速さとしている。さらに動画を再生することによりその動作がつかみやすくなっている。 カン・コツというのは言葉や数字で明確に表わせないからカン・コツであるという意見もある。確かにそうかも知れないが、我々の目指すのはとにかく早く一人前の技能者になって貰いたい。通常であれ1.ベアリング加熱、膨張6.1 カン・コツの抽出 研修の中では機械組立作業で行う「ベアリングの焼きばめ作業」を題材として教材の制作を行う。焼きばめというのはベアリングを加熱膨張させ、軸にはめ込むという作業(図3参照)である。ば5年掛かるのを3年にできないかということであり、すべてを教材に頼るということではない。当然、ひとつの技能を身に付けるには経験というものが必要であるのは言うまでもないが、技は盗むというような従来の発想ではなく、学習者が理解しやすいように工夫することが肝要となる。 ベテランの動作をとことん追究するには、質問することである。どこを見ているのか、今の動作の意味は、なぜそうするのか、細かなところまで聞いてみる。そこでベテランが返答に窮するところがあれば、それはまさに無意識に行っているカン・コツではないか。方法としてその動作をビデオに撮り、再生停止巻き戻しを繰り返し、ベテランにインタビューしてみる。その内容を記録しまとめていく。ベテランはどんなに当たり前と思うことでも真摯に答える態度で臨むことが大切であり、インタビュアーは何かを引き出す気構えと感性が必要となる。その作業を全く知らないインタビュアーでも良い。むしろ、固定観念のない方が有利に働く場合もある。ベアリング2.ベアリングはめ込み5 ベテランの動作をとことん追究する6 実作業での映像型技能伝承教材の制作技能伝承の取り組みについて①ベアリングの穴は、はめ込まれた軸により冷却時の自由冷却が妨げられ、内部応力が発生し固着状態となるベアリングの穴は加熱により膨張するベアリング3.ベアリング収縮、固着

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