2/2011
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争力を維持し続けるには、新興国が簡単にまねで出来ない工業製品を、ものづくり力によって創りだしていくことが求められている。 その分野は、新素材関連、環境関連、情報機器関連であったりする。将来エンジン駆動の自動車に取って代わると言われている電気自動車の開発に、いま世界がしのぎを削っている。具体的にそれは、搭載用リチウムイオン電池、駆動用モーター、ブレーキ、エアコンなどの装備、新素材ボディーの開発、安全や省エネ走行に関わる制御用ソフトなどである。中でも搭載用リチウムイオン電池は、電気自動車用に限らず太陽光発電用の蓄電池など幅広い用途で開発が待たれているが、その性能を決めるのは、ミクロン単位の薄膜製造技術のものづくり力にかかっていると言われている。 このように、素晴らしい理論や発想に基づいて企画や設計が行われても、ものづくり力によって価値ある製品に作り上げることができないと世界的な開発競争には勝つことができない。このことは、日本の輸出の稼ぎ頭である工業製品輸出の減少につながり、日本の経済力にとどまらず、国力の衰退へとつながることが危惧される。 新興国のものづくりの足音が後ろから迫ってくる中で、日本のものづくりはどう闘っていくのか、今後の展開を待つしかないが、少なくとも、ものづくりを行っている中で、ものづくり力は培われて行く。コストダウンなどのために生産拠点を海外に移すと、組織内にはものづくりへの”こだわり”をもった、ものづくり力のある作り手がいなくなってしまうと同時に、新しい担い手が育たなくなる心配がある。 日本の歴史が長いあいだ蓄積してきた、ものづくり力に関わる技術・技能、知識、経験は、膨大なものがある。これらを継承し発展をさせていくことが、世界に対する日本のものづくりにおける競争優位を保つ源泉となっていくことは言うまでもない。 これらを発揮して、量産が難しいオンリーワンの製品や、今までにはなかったか、あるいは考えつかなかった新しい製品を作り出していくために、ものづくりに対する情熱とものづくりへの“こだわり”がますます重要なことになっていると考える。−33−エッセイ

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