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111.はじめに2.1年次の取り組み近畿職業能力開発大学校附属京都職業能力開発短期大学校中須 一夫特集 近年の雇用情勢はこれまでにも増して厳しく,当校が在る京都北部地域は,大手企業の工場撤退や中小・零細の企業は切磋琢磨するも倒産に追いやられるなど,その影響が顕著に表れている地域のひとつである。 本稿は,このような雇用情勢のなかで平成22年3月に卒業した住居環境科の学生の担任として就職希望者24名を対象に取り組んだ実践報告をするものである。 私は平成20年4月入校生の担任を受け持ったが,この時期はリーマンショックの影響が日本の企業にも波及し,内定取り消しや,年度が明けても自宅待機を強いられる卒業生が問題になっていた。このため,次年度以降の就職戦線は尋常ではないという思いの反面,「この時期にこそ高い就職率を出す」と決意した。当時作成した入学から卒業までの2年間の就職支援の計画を図1に示す。 入学してきたばかりの学生には,自分がどのような形で,これから学ぶものづくりの業界に携わるか,というビジョンを描いてもらう必要がある。このためには,その業界に関する知識,つまり,業界に存在する職種やその仕事内容,就業形態,仕事場の環境,給与形態,また,それぞれの職種がどのよ1/2011うに連携をしてものづくりがなされるかという具体的なことを知る必要があるため,ホームルームの時間を週に1時限確保した。 私が最初に取り組んだことは,1年生の5月ごろに図2および図3に示す進路希望調査を実施するととともに,業界の知識を学生に与えることであった。このとき,さまざまな職種を説明したツールがあれば,学生に対する説明が楽であったと思うが,そのようなものを探してもある程度認知度の高い職種のものしか見つけることができなかった。そこで,職業分類表(厚労省編)を使用し,気になった職種に印をつけてもらい,その職種について説明をするという形をとった。印をつける際には,どのような職種かを考えるのではなく,文字を見て直感的にこれはどうかと思うものを対象にした。これによって個々のある程度の方向性がみえてきた。なお,質問項目はごく一般的な内容で,以下のとおりである。 ・やりたい仕事内容 ・就職希望地 ・興味を持っている業種・職種 ・仕事を選ぶときの優先順位 ・理想の働き方 ・仕事・会社を選ぶときに重視すること 次は進路希望調査をもとに,個人カルテを作成し,個人面談を約60~90分かけて行った。入校して最初の面談のため,なぜこの科で学ぼうと思ったのか,なぜ当校に入学してきたのか,これからどのようにしようと思っているのかを聞いた。このとき2.1 進路の方向性を定めるために   就職支援の取り組みについて―入学時から2年間の就職支援の取り組み―住居環境科の全員就職を目指して

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