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6.就職活動に使ってみると   図6 K社の技術面接あで受験した学生が      発表用に試験場で作成した資料4/2010表皮効果によって単線のほうのコイルの抵抗値が,倍以上大きくなっていることを示している。 また,写真13はアクリルパイプの中に,被加熱物となるステンレスポットを挿入して,インダクタンス値とQ値を測ったものである。Q値に注目すると,倍以上の開きがあったが,両コイル共に同程度まで下がっている。このことは空心時のQ値が高いほど,ステンレスポットに供給できる熱エネルギーとして,渦電流等の鉄損分が大きいことを示している。 製作した加熱用コイルは,耐圧1kVの高周波用セラミックコンデンサと直列共振回路を作るので,ステンレスポットを挿入した状態で,この回路の共振点周波数と共振点インピーダンスを,周波数特性測定装置で測定する。この値は学生個々により異なるので,実際はこの測定した周波数でのインダクタンス値やQ値をLCRメーターで測定し記録する。 製作には時間を要するため,多くの学生が放課後残って製作している。また,一通り出来上がると動作確認をする。動作確認では,写真14に示すようにPLL回路が働いてこの共振周波数で動作していることを確認する。しかし一度で正常に動作することはまれで,その原因究明にまた時間がかかる。この段階になると連日遅くまで残っている学生も多い。一生懸命やっているのだから,上記のような自分の製作過程や測定結果を,原理とともにノートに整理すれば,良いドキュメントができるし,就職活動に必ず生かせると何度も言っているのだがなかなか旨くいかない。 先のインダクタンス値やQ値の測定,直列共振回路の共振周波数・共振点インピーダンスの測定,写真14のように共振周波数に応じて回路の発振周波数が変化する動作波形の測定等で,測定器に出た結果を見ながら理論的なことを説明するが,メモするあるいは必要なら写真に撮るといっても,撮ってほしいという学生は結局1人もいなかった。こういった製作実習を通して,電気・電子の仕組み・原理に興味を持ち,関心を示し,自分から学習するようになり,就職に生かしてほしいという思いで取り組んできているので残念である。 平成21年度,求人が大幅に減り,就職活動は非常に難しい状況であった。 その中で関西のK社が技術面接を行うといい,電子技術科から1人学生が受験した。FCCスイッチングレギュレータを製作したことを発表したいというので,試験前約1週間,放課後残って真剣に勉強した。 スイッチングレギュレータで最も重要なのはスイッチングトランスであり,トランスの原理,巻き数の求め方,極性の重要性,極性のチェック方法,PWM制御を使ったFCCの安定化法など説明していき,発表用資料も作成した。もちろん面接試験場では参照することはできない。 彼が試験場で作成したという発表資料を図6に示す。一生懸命覚えようとした跡はうかがえるが,学7

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