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・Vs・VL・Vo・( :インバータの出力電圧(交流))VoX~・~2.系統連系インバータの構成2.1 系統連系インバータ図2 系統連系インバータの概念図242.2 PWMインバータVdc太陽電池インバータ(直流電源)連系リアクトル電力系統負荷Vacンバータによる電流制御,力率制御およびMPPT制御などの電力工学・パワーエレクトロニクスにおける先進技術を効果的に体得できる内容であると考えている。 筆者らは,本実習用教材の詳細を2回に分けて報告する。前編に当たる本稿では,本教材の学習の流れと全体像と示すとともに,系統連系インバータシステムの構成と設計・製作・試験における学習要素について述べる。 「インバータ」とは,サイリスタやIGBT(Insulated-GateBipolarTransistor)といった電力用半導体バルブデバイスのスイッチ動作によって,直流電力を交流電力に変換する装置である。「系統連系インバータ」とは,発電された直流電力を交流に変換して,負荷に電力を供給するとともに,余剰分については電力系統に逆潮流させる機能を持つインバータである。図2にその概念図を示す。 電気エネルギー源には石油や石炭のような化石燃料,水力および原子力があるが,最近では太陽電池や燃料電池などの新しい発電システムが注目されている。これらが発生できる電気は直流である。このため,太陽電池あるいは燃料電池などによって発生する直流電力は,インバータで直流から交流に変換された後,負荷に供給される。 太陽電池を例にとると,太陽電池の出力は日射量等によって変化する。このため,日射がない夜間においては負荷に電力を供給できなくなる。さらには,十分な日射量があるときであっても,負荷側の都合で電力を必要としない状態が発生することも少なくない。このような状況は,太陽電池の利用率の低下を招く。そのため,実際の太陽光発電システムでは負荷に対して単独で電力を供給するのではなく,電力系統とも連系して運転される。太陽電池を系統と連系する場合には,日射量の変化に応じて常に最大の出力で運転させることができるため,太陽電池が本来持っている発電能力をフルに活用できる利点がある。また,太陽電池が発電していないときには電力系統から電力を受けることができる。 系統連系インバータによって太陽電池を電力系統に連系する場合に重要な事項を列挙する。⑴ 周辺の配電機器の低コスト化や損失の低減を図る必要性から,系統側の力率が常に1となるように運転する。このためにはインバータは,系統電圧の位相を常に監視し,これに応じた位相の系統電流を供給するように制御されなければならない。⑵ 受電端における電力の品質劣化を防ぐ必要性から,系統に逆潮流される電流の高調波をより少なくする。このために後述するPWM制御を採用した電力変換が必須となる。⑶ 太陽電池の最大出力追尾も重要な課題である。太陽電池の出力電圧は,日射量等の影響でかなり広範囲に変動するので,常に最大電力が得られるように最適な動作点を追尾する必要がある。これについては,次号に掲載される本論文の後編で述べる。 「PWM」とは,パスル幅変調のことである。これは,インバータの出力電圧波形の基本波周期1サイクルの中で,主回路を構成する電力用半導体デバイスを順次パルス幅を変えながら高速にオン・オフし,等価的に出力電圧を正弦波に近づける制御法である。一般に,インバータをPWM制御することによって,所望の位相と波形の交流電流を得ることができる。もちろん,完全な正弦波を得ることは不可能であるが,高調波含有率がきわめて少ない交流電流を得ることは可能である。よって,PWM制御を採用し,系統側の交流電流を系統電圧と同相(力率1)の正弦波となるように運転すれば,前節で述べ技能と技術

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