4/2010
23/40

化粧天秤梁の納まり4/2010地松太鼓丸太梁の組手長ホゾ・連柱による耐震ねばり工法上棟風景る。この2本の定規をもとに立体を組み上げ,数百本の部材に墨でマーキングする。1本について数十の寸法を入れるのだ。こうして入れる寸法は,延べ数千~数万にもなる。1つでも間違えれば家は建たない。 しかし,寸法の計算や記憶する寸法の多さといったハード面の困難はたやすい。ここで自分の心との戦いが起こるのである。人間の思考には思い違い・勘違いがつきものである。「これでいいのか」「間違っていないか」何度確認しても,消せない疑心暗鬼。己とのこの戦いに勝つ強い精神力をも持ち,乗り越える者のみを大工棟梁と呼ぶ。 さて,高さや長さをマーキングしたら建物が建つか? ここで重要な仕事がある。接合部である。 いかに丈夫な材料を用いても,接合部で応力をうまく伝えられなければ,強い構造体ではない。鉄筋コンクリートRC造であれば液体を流し込んで固体化させるので接合部は発生しない。鉄骨造はすべて溶接とボルトによる接続で一体化する。しかし,木構造においては,接続箇所があり,そこには必ず欠損がでる。しかし,そこは,組みあがれば見えない。しかし,その欠陥をも頭に入れた木組みをしていく知識が必要になる。しかし,近年,金物でジョイントするという工法が増加してきた。非常に簡単にできる工法である。それが主流となったのは,大工が伝えてきた仕口組手を墨付け,加工できる職人が激減したからである。それとともに,数値で表しきれない堅牢さを解析できないためである。 日本の木造の技能は,厳しい徒弟制度のもと,千年を超えて伝えられ,問題のあるものは淘汰され,優れたものは改良され継承されてきた。その伝統的寸法を熟知した大工が,後世に残る堅牢な木造を建ててきた。その優れた技能をここで断ってはいけない。大工を学ぶ者が受け継ぎ,スクリーニングし,次に伝えていくべきでは,と考える。 このように,3次元の空間を構築し,厳しい自然環境から人を守る空間を造ることが,1つの基本ベースである。しかし,更にここに思想が入ることで文化性の高い空間となる。いつの時代も,建物は文化・芸術と融合し,その時代を反映した建造物を造ってきた。21

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る