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地松化粧太鼓丸太梁の加工20柱の選別地松梁の仕口・組手株式会社梅田工務店 代表取締役梅田 宗春特集 耳を疑った。 「大工」って名前がすばらしすぎる,とある人に言われたのだ。 私は大工という名前があまり好きではなかった。ださく,古く,イメージが悪いと思っていた。 改めて考えてみた。世の中に職業は多々あれど,「大」が頭につく職業名はない。いや,あった。大統領,大臣。友人の大学教授が「私も」と手をあげた。却下。それは大学の「教員」だ。では,なぜ大工は「大」がつくのか。 歴史的に検証すれば,聖徳太子が右官,左官と任命し,右官が大工だという説もある。古い絵巻物に描かれる大工の頭かしらをよく見てみれば,それらの大工棟梁は墨壺・差し金・墨差しをもって作業をしている。そう,墨付けをしている姿が描かれているのだ。 「墨付け」とは木材の質を熟知し,床や屋根の荷重・応力を見極め,まさに適材適所に分配し木構空間を構築する,木材や寸法・仕口を完全に把握し,すべての下職の仕事の納まりを熟知し,思想・理念・概念を明確に認識して建物全体を束ね納めるために打つ墨の印のことだ。この墨付けが大工仕事の要かなめであることが「大」という称号を与えられたゆえんであろうか。 「墨付け」をわかりやすく説明する。まず,材料を選ぶ。その木の天地,木表,木裏,株末,目積,抜節を見極め,そこに墨で印をつける。図面に書かれた寸法どおりに木材に転写するのなら簡単だが,そうではない。図面には書ききれない部分を読み取り,看板板に平面図を書き,まず,間竿という定規を作る。次に高さのための柱つえという定規を作技能と技術4   ものづくり訓練の現状と課題等について―「大工」が伝えてきた日本のものづくり精神と技能―「大工」

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