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8.左官仕上げの特性⑵ 漆喰壁の特性⑶ セメントなど他の材料⑷ 湿式材が持つ防火性・耐久性⑴ 色土(京土)⑵ 壁 土ら廃棄にいたるライフサイクルでのCO2の排出量は格段に低く省エネ材である。 漆喰を含む塗り壁は,シックハウス症候群などを防止する健康壁として知られる。アレルギー体質(アトピー)など,困っておられる方で塗り壁の家に移って完治したなどの話をお聞きする。 漆喰には,上記の調湿以上に多くの特性がある。漆喰は,壁に塗り硬化するときに空気中の二酸化炭素を吸収しながら硬化する。その吸収量は石灰40kgに対して24kgになる。この使用量は,一般家庭の6畳の間の壁の量に相当する。この壁を1万㎡施工すると漆喰の量を13.3t使用するので,CO2ガスの吸収量は7.9tになる。これを対比すると,例えば50年杉の大木が1年間に吸収する量の560本,逆に1人の人間が排出する量320kgの25人分に相当するので,漆喰の壁が吸収する効果に理解が得られると思う。 更に,漆喰が持つ「抗菌性(不活化率)」がある。鳥インフルエンザに対する殺菌に石灰が使われた事実をTVなどでみられたと思うが,鳥取大学農学部鳥由来人獣共通感染疫学研究センターの実験によりドロマイトプラスター添加漆喰の抗菌率99.998%が確認された。これは単一石灰の抗菌率より高い数値が出ている。 この抗菌性は,新インフルエンザなどで問題となっている病院の院内感染や学校での学級閉鎖などを防ぐものといえる。(注)以上の数値の計算式は,紙面の関係で省く モルタルやコンクリートブロック等の製品は,製造過程において多少のCO2を排出するがセメントの製造における燃料の多くは,産業廃棄物の再利用をしている。また,これらのライフサイクルにおける廃棄においてのエネルギーの使用量は焼成がないだけに低く,一部はリサイクルに廻されるものがほとんどである。18 自然素材である左官の材料には数百年の歴史を持つ耐久性があり,土を含む材料の性能から防火性を持ち不幸にも火災に遭遇しても,材料的に延焼が遅く,化学物質の汚染もないので,逃げる時間があり,人命を守る。 建築の仕上げには,今まで述べてきた湿式材を多く使用する「湿式工法」と,木材や化学製品で加工される乾式材による「乾式工法」に大別される。今まで比較してきた材料は,この乾式材(合板やクロスなど)を対象としたものである。 湿式材の特徴:湿式材料は,展伸性を最大の武器とするが,ほとんどが自然素材でありリサイクルを含む省エネ材として注目されるところである。また,低炭素材料で他の建材にない利点を持っていることが特徴である。 自然素材を使った仕上げには,土や漆喰が使われることを紹介してきたが,それぞれの分野について「左官仕様」別に特徴を述べる。 全国でも有名な聚楽土は,伏見の稲荷土と同様京都で採出されたことから京都が左官発祥の地といわれている。これらの色土から,聚楽壁などの京壁独特のものが生み出される。特に有名なのが茶室などに塗られる「聚楽水捏ね」・土塀などの「錆壁」がある。 仕上げに使う色土だけでなく,荒壁や中塗り土等の工程にもいろいろな過程がある。亀裂防止を防ぎ強度をもたす「土づくり」は,更に重要となってくる。土蔵や土塀などの荒壁では,新土と古土との割合が難しく寝かすタイミングに見極めが必要となる。中塗りや仕上げに使う土は,水漉しや粘度に経験が必要となる。技能と技術

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